海外与信管理レッスン基礎編の第2章では、貿易取引のチェックポイントを解説していきます。
▼目次
貿易取引の特徴
貿易取引は、”モノ”や”カネ”の動きだけでなく、様々な貿易書類(Trade Documents)の動き・流れを把握することが大切です。なぜかというと、そもそも貿易取引には、国内取引とは異なる3つの特徴があるからです。
- 国境をまたぐ(クロスボーダー)取引であること
- 物品の輸送に非常に時間がかかる取引であること
- 法律、制度、言語、通貨、商慣習等が異なる当事者同士の取引であること
貿易取引=国際標準がある取引
貿易には、様々な国際的なルールが設けられています。「L/C」や「B/L」といったルールに基づく貿易書類があるからこそ、物理的な距離が遠く、言語も異なり、商慣習も全く異なる当事者間が円滑に取引を行うことができるのです。貿易取引とは、言い換えると、「国際標準がある取引」と言えるでしょう。
代表的な貿易取引のルールには
- INCOTERMS(インコタームズ)
- Revised American Foreign Trade Definitions, 1941(1941年改正 米国貿易定義)
があります。
INCOTERMSは、「International Commercial Terms」の略で、国際商業会議所(ICC)が制定した国際的なルールです。最新版は2011年1月に発効した「INCOTERMS2010」です。
これらは、売主・買主間の取決め事項であり、自動的に適用される条約、法律ではありません。契約当事者が、当該契約の解釈基準として採用する旨の合意を明示することではじめて強制力をもつことに十分注意し、取引条件の交渉、契約締結を実行すべきです。
貿易取引条件を交渉する際の留意点は?
また、取引先と取引条件について認識の齟齬が生じないように十分注意する必要があります。
外国企業と貿易を通じて売買契約を締結する場合、契約書に記載すべき、一般的な取引条件は、次の5条件があげられます。
- 品質条件
- 数量条件
- 価格条件
- 受渡/引渡条件
- 決済条件
特に、新興国の取引先との貿易取引では、国際慣行において自明の理の内容であっても、可能な限り具体的かつ詳細に契約書に明記すべきです。できれば、内容の十分な説明を行い、後日のトラブルの口実を与えないような配慮が必要です。
最後に、取引条件の交渉、決定および契約の過程で注意すべき点を3点ご説明します。
①口頭での合意は避け、取決め事項は漏れなく契約書に明記する
後日トラブルとなるケースの多くは、時間的な制約や手間を理由に、簡単な基本事項のみで契約を締結した場合です。このような場合、後日不測の費用請求を強いられたり、いわゆる“難くせ”を付けられたりします。契約書には可能な限り詳細に合意事項を記載すべきです。
②契約の署名権限者からサインを取り付ける
難しい交渉の末、せっかく締結した契約書の署名者が、権限を有する者でなかったことから、後日に契約をキャンセルされる場合があります。訴訟を提起すれば十分に勝ち目のある場合でも、時間や費用を要することから、結局、相手の要求を飲まざるを得ないケースもありますので、契約締結権限の有無を十分チェックしておくべきでしょう。
③自社書式をひな形として相手と協議する
相手先が作成してくる契約書の中には、具体的内容に欠ける場合が多く、それに対してこちら側の要求事項を入れるように交渉することはとても骨が折れます。なるべく自社書式の契約書をドラフトとして提示し、これをベースに交渉し、契約内容に漏れや落とし穴がないようにするべきでしょう。
まとめ
貿易取引は、「国際標準がある取引」のため、貿易用語や基本的な知識をしっかりと把握しておくことが、まず重要になります。(おすすめは、ジェトロの貿易実務オンライン講座です。価格も手頃で、内容充実してます。)
そのうえで、取引先の常識と自社の常識は異なっていることを念頭に、取引条件の交渉に臨みましょう。
次の記事はこちら→第2章(2)貿易取引における海運物流(船積・荷揚げ)の留意点