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ヨーロッパ

欧州リスク②「緊縮」か「成長」か、EU内で財政危機回避に向けて続く論争

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欧州諸国は財政危機回避に向け、ドイツが主張する「緊縮財政」を進め、増税と年金カットなどに努めてきました。この影響により緊縮疲れが進行し、近頃は逆に、
経済成長を優先することで税収を増やす政策へ、つまり「緊縮」から「成長」へと舵が切られつつあります。財政再建問題が重くのしかかる欧州では、
・財政が均衡し経済が好調な国(ドイツなど)
・財政赤字に苦しむ国(南欧諸国) の二極化が進んでいます。連載第2回となる今回は、
・「南北で拡大しつつある経済格差」と
・「財政再建取組の実情」
をテーマとして、ドイツギリシャに焦点を当てて考えてみましょう。

 

▼目次

欧州を振り回す「台風の目」ギリシャ

尻尾が犬を振り回す」

欧州の台風の目は何と言ってもギリシャです。その存在はまさに「尻尾が犬を振り回す」と例えられるほどです。
人口、面積などは欧州の2%程度なのに、ある理由から

「ギリシャがユーロから脱退したらEUは困るだろう」と高をくくっているところがあります。

それはなぜでしょうか?
ギリシャは、北はバルカン諸国東はトルコ・そして南はアフリカ諸国に面した、交易上の重要地点です。
 つまり東地中海の均衡を保つ上で、西側諸国にとって欠かせない存在といえます。
彼らはその意義を熟知しているため、EUに対して強気の姿勢を取っているのです。

2009年ギリシャ・ショック(債務危機)

ギリシャは2001年のユーロ圏加入にあたり、加盟基準
財政赤字GDP比3%以内、
政府債務残高GDP比60%以内
を粉飾した経緯があります。
 
その事実が2009年に明らかになったことを引き金に、ギリシャ国債の信用格付けはデフォルト寸前まで引き下げられました。
そして同国国債を大量に保有していた金融機関が経営不安に直面するなど、金融市場を恐怖に陥れたのです。

 

幸いこの時は、欧州危機回避に向けて
「(ユーロを守るために)何でもする」という旨のドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁の宣言
・欧州の金融システムの補強

等により、ギリシャに貸し込んでいた金融機関の危機は回避されました。

 そしてまた今、2015年1月の総選挙で選ばれたチプラス首相は
「ユーロ脱退」「ロシアへの接近」をちらつかせ、IMF(国際通貨基金)・EU・ECBへ借金帳消しを迫っています。
現在もまた、金融市場はギリシャの財政再建問題の行方を緊張しつつ見守っている状況です。

「欧州の盟主」ドイツは一人勝ち

一方、欧州でもドイツの経済は為替レートの恩恵を受け輸出が好調で、中国とは世界で1,2位の貿易黒字を競っています。
ドイツは経済的に一人勝ちし、政治的にも欧州を主導する「欧州の盟主」として君臨していると言っても良いでしょう。

現在、ギリシャとドイツ、この両国の関係はまさに犬猿の仲になっています。

欧州各国民のステレオタイプ(先入観)調査によると、ドイツ国民ギリシャ「最も信頼できない怠惰な国」見ています。

一方ギリシャ国民ドイツに対して、ナチス占領時の恨みを忘れていません。

さらにメルケル首相に課された「緊縮財政」に不満を募らせていることから、ドイツを「全く信用できない国」として嫌っています。

この2か国は欧州で片や勝ち組の代表片や負け組の代表と言ったところです。

共通通貨ユーロの為替レートは、ドイツの実力に比し割安の水準です。かたやギリシャの実力に比しては割高に決定されているせいだとも言えるでしょう。

 南欧諸国のリスクは消えていない

ドイツの一人勝ちが進む一方で、ポルトガル・イタリア・ギリシャ・スペイン等南欧諸国は財政赤字に陥っています。

ギリシャ・スペインでは若者の半数が失業するなど、その状況は深刻です。

現在では、市場は落ち着きを取り戻し、さらに世界的にも長期金利は低下しています。
従って財政破綻への不安も弱まっているので、危機は一息ついている状況と言えるでしょう。
しかしやはり、このような南欧諸国に端を発する債務不安の嵐はいつ再発するとも知れず、要注意です。

 

おわりに

今回は財政再建問題が重くのしかかる欧州において、二極化が進んでいる現状を解説しました。
高い失業率や、経済停滞に苦悩する一部の欧州諸国。
今日におけるドイツの成功をもたらした構造改革や、とくに労働コストの削減や若者の職業訓練など、労働市場の改革による経済効率化が必要といえます。
risk_profile ●コラム筆者プロフィール●

名前:テムジン
リスクマネジメント界のチンギス・ハンです。
一言:迷える子羊たちに、世界各国のカントリーリスクを
分かりやすく説明します。

 

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