前回は、60後(リウリンホウ)、70後(チーリンホウ)、80後(バーリンホウ)の各ジェネレーションの中国人とのビジネス上の付き合い方として、接待で共にお酒を飲むときのマナーについて紹介しました。二回目となる今回は、接待での食事のマナーについて紹介します。
中華料理は世界三大料理にも数えられ、地域によって様々な料理があり、中国人の接待では必ずと言っていいほど、地域の特色ある料理が振る舞われます。多くの場合、円卓の回転テーブルに料理が並べられ、各々がとり皿に取って食べるスタイルです。中国人にとって円卓を囲み食事を共にする事は、友好の証と言ってよいでしょう。
▼目次
[60後・70後の接待] 食事編 その1—円卓の上座と下座—
中華料理を食べる円卓にも上座があります。円卓の上座は正面中央、個室であれば入口に対局する正面の壁(部屋のインテリアからどこが正面かはすぐに分かります)の中央となります。
基本的には上座に座るのは食事をご馳走する人、すなわち相手方(中国人)の用意した接待では、中国人リーダーです。接待するリーダーの席の両隣は接待を受ける側のリーダーが座るのが一般的です。若手は店員への対応がしやすい入口に近い席に陣取ります。
[60後・70後の接待] 食事編 その2—気前のよさをアピールするー
古くから中国人にとって、特に男性に対しては「気前がいい」という言葉は最高級の褒め言葉です。先述したように円卓は上座がどこかが分かりやすい、すなわち誰が食事をご馳走するかが一目瞭然です。接待するリーダーは、食事する人数に対して食べきれないほどの量や種類の料理を注文し、円卓の中央に並べます。
接待はリーダーが「気前の良さ」をアピールする場なのです。これらの料理を「もったいない」と食べきってしまうと、相手方に「まだ足りない」と捉えられ、失礼に当たります。中国人の面子を大事にする気質がよく現れていますね。
出された料理は残すのが基本。もったいないと気を使う必要はありません。食事の後、残った料理はテイクアウトして運転手や若手に持ち帰らせています。
[80後の接待] 食事編—人脈の広さをアピールする—
60後、70後の接待が、中国人の王道の食事スタイルだとすれば、80後の若いエリートや企業家との食事はもう少し多様化していると言えるでしょう。
彼らは異業種交流や若手企業家同士の交流も盛んで、人脈の広さを自慢したがる傾向があります。王道の高級中華料理店で円卓を囲み、食事とお酒を同じお店で長く楽しむ接待スタイルもあれば、友人の経営するモダンな創作中華のお店で食事をした後、別の友人が経営するバーで飲むという接待もあります。
接待される側には人脈の広さをアピールし、訪れた店の経営者である友人には日本人のビジネスパートナーを自慢するといった感じでしょうか。王道の中華料理接待を期待して臨むと少し拍子抜けしてしまうかもしれませんが、そこでビジネスの可能性が広がることがあるかもしれません。
接待スタイルの変化—「倹約令」の影響—
ここ2~3年の間、中国の高級料理店が経営不振に陥っており、その原因は習近平が打ち出した「倹約令」にあると言われています。
これまでの政権でも官僚の汚職撲滅や国営企業の豪華接待禁止などの政策を実施していましたが、「倹約令」は文字通り「倹約」の意識を、国民全体に植え付けるものでした。町のなかの庶民的な店でも「食べ残し禁止」のスローガンを見かけるようになり、官僚の汚職にとどまらず、民間企業や庶民の間でもその影響が大きく現れています。
「食べ残すマナー」の王道接待スタイルはしばらくお目にかかれないかもしれません。
まとめ
「倹約令」は日本の「もったいない」意識にとても似ています。「量より質」を求める中国人の意識の変化は、食事の場においても如実に現れており、今後は日本と中国の習慣や意識の違いは少しずつ無くなっていくのではないでしょうか。中国が日本の文化に近づく事で、新たなビジネスチャンスが生まれるかもしれません。
前回はこちら→各世代の特徴別に攻略!中国人ビジネスマンとの「お付き合い」~接待のお酒編~【60後・70後・80後】