【海外ビジネスの専門家は人工知能をこう使っています】翻訳、検索では人力で締める
海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
海外ビジネスに携わる者は、どのような&どのように、人工知能AIを使っているのか、という疑問にお答えする回です。筆者および同業者からの意見を述べてみます。
AIに指示して作ったイラストがこちら
出典:合同会社トロ資料
1.AIは役に立つが万能ではない
既に皆さんお気づきのとおり、あるいはご経験のとおり、人工知能AIは万能ではありません。検索をする、文章を書く、翻訳する、それぞれにおいてとても個性的なアウトプットが出てくることがあります。明らかにあり得ないアウトプットの場合にはこちら人間の側も誤りにすぐ気づいて修正できるのですが、こちらの知識やノウハウがそれほどのレベルに達していない場合には誤情報をそのまま使ってしまう可能性があります。
2.AIに仕事を命ずる(文章、翻訳)
英文法令等の該当箇所を和訳する、英文契約書を丸ごと和訳する、日本語文章を英訳する、というケースでしばしば誤訳が登場します。AIはインターネットに存在する範囲内で情報を探すので仕方ない部分もありますが、文章作成力、外国語翻訳力に関しては出てきたアウトプットを参考にしながら、最終的には人間が必ずチェックすることを忘れてはいけません。翻訳の場合、和文→英文で出てきたアウトプットを、今度は逆に、英文→和文に訳して、アウトプットがどう見ても違うようならば再考が必要です。最終的に人手をかけることになりますが、AIを使うことで推敲までの過程を大幅に短縮することができます。
AIツールは沢山ありますが、無料版よりも有料版の方が、「こなれた翻訳をする」、「細かいニュアンスをわかっている」表現を出してくる、使い勝手の良さ、についても指摘がありました。
AI使うならば無料版より有料版でしょうか? ただし有料版においてもデータや資料収集作業には誤情報が含まれていることがあるので、最終的な人間の目と判断は欠かせません。
3.AIに仕事を命ずる(スライド、画像)
プレゼンテーションの叩き台としてAIを使うことは今や当たり前になりました。プレゼンの大まかなシナリオをAIに指示するとそれをスライドとしてアウトプットしてきます。そのままではAI臭い(無機的な)ので、仕上がりに人間の判断や加工無しには聞いている人を唸らせることは難しいです。
画像に関しては、冒頭のイラストがAI作成です。「高級店、店員、イラスト」と指示して出てきたものがあのイラストです。人間の視覚にはかなりいい加減なところがあるので、AIが作った動画等に翻弄される人も少なくありません(筆者もその一人です)。
4.AIによる成果物の著作権をどう考えるか
AIに簡単な指示をして出てきた成果物は基本的に他者の著作権侵害を考える必要はない、というのが担当機関の見解です。
文化庁 AIと著作権について
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html
ただし、AIへの指示段階で具体的に「xxの作風のような~」という指示をすると著作権に抵触する可能性があるのは常識で判断できましょう。
くれぐれも他者の権利を侵害しない範囲でAIを使って行きましょう。
5.海外ビジネスの分野でどう使うか
人間は間違える、AIも間違える、という前提でAIと付き合うことでいかがでしょうか。AIを使うことで文章作成の手間と時間、翻訳の手間と時間が大幅に削減できます。アウトプットされたものには必ず間違いがある、と見なし、間違い探しをする意識で、より正確な、より練られた文章にします。
海外の取引相手とのコミュニケーションは基本的には英語ですから、やや込み入った内容の英文を作る時はAIを利用して労力と時間削減を図りましょう。
まとめ
AIは万能ではありません。AIは間違えます。人間と同じです。間違えがある、という前提でAIを使った翻訳、契約書や法的文書の作成や解釈を行えば、大幅な労力と時間の削減につながります。
AIで作られた成果物は基本的には他者の著作権侵害の可能性は低いのですが、作成時の指示で具体的な著作者や作風を指示することは避けましょう。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングや研修サービスを、民間企業およびジェトロや大阪商工会議所などの公的支援機関向けに提供している。これら機関向けセミナー実績も多数有する。
URL:https://sub.toro-llc.co.jp