海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
貿易取引、つまり物品の輸出入で欠かせないのがインコタームズです。FOB横浜とかCIF Bangkokとか、貿易書類の価格には必ずインコタームズの3文字記号が書いてあります。FOBとかCIFという記号と大体の意味を前任者から聞いたけど、実はどういうことなのかよく分かってない・・・。そんな方にインコタームズをわかりやすく解説します。
ソフトクリームを落としました。さて、お金はどうしますか?
売り手、買い手、どちらの責任ですか?(危険負担)
インコタームズの説明でよく見るのは、「危険移転」、「危険の負担をどの時点で移転するか」というような文言です。「危険」って何でしょう?貿易は危険なのでしょうか?(そんなことはありません)
インコタームズにおける危険とは英語でリスクのことです。危険というよりも、損害や損失という語の方がイメージに合います。
先のイラストで、ソフトクリームを落とした例を出しました。もし店の人が子供に渡す前に落としてしまったら店の人が作り直します。落とした店の人に責任があります。作り直しの代金¥300をもらうことはできません。
ソフトクリームを子供に渡し、代金¥300をもらった後で子供がソフトクリームを落とした場合、店に責任はありません。落とした人に責任があります。ソフトクリームを食べたいならばもう一回¥300を払ってソフトクリームを注文しないといけません。当然ですね。
インコタームズの危険負担というのもこのソフトクリームのような話です。物品に何らかの損害や損失が発生した場合、それがどの時点で発生したのか、その場合の責任を売り手あるいは買い手のどちらが取るのか、ということを決め、その条件を3文字記号で表したものがFOBやCIFです。
もちろん実際の貿易におけるインコタームズではこのソフトクリームのように簡単なことはありませんが、「危険移転」についての基本的な考え方は同様です。
運賃はどちらが支払う?(費用負担)
インコタームズのもう1つの決まりに「運賃」があります。日本から外国のA地点まで物品を届けるので、船や飛行機の運賃がかかります。国境を接している欧州のような所であれば陸送という選択肢もあります。
日本国内でも宅配便や郵便の費用を、売り手が負担するか、買い手が負担するか、という選択肢があります。売り手が負担する場合は本体価格に上乗せされ、買い手が負担する時は着払いという方法で支払うのは皆さん経験済みですね。
インコタームズでも同様に、運賃をどちらが負担するかに応じていろいろな選択肢を用意しています。FOBならば運賃は買い手負担、CIFならば運賃は売り手負担することは皆さんご理解のことと思います。見積もり段階で抜かりはありませんね?
貨物の損傷や被害に備えた貨物保険についても、売り手が負担するか、買い手が負担するか、を選ぶことができます。CIFならば保険料を売り手が負担、CFRならば保険料を買い手が負担します。
次回はインコタームズの全体像、全11条件の概要、について説明します。
まとめ
インコタームズは、貿易において、売り手と買い手のどちらが貨物の損害に責任を持つか、運賃などの費用をどちらが負担するか、を取り決めた国際ルールです。見積り、船積書類には必ず、インコタームズのどの条件の価格なのかを記載します。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングサービスを、ジェトロや中小機構などの公的支援機関および民間企業向けに提供している。
URL: https://sub.toro-llc.co.jp/