注目の日印首脳会談、メディアはどのように報道したのか?
インドで日本企業の進出支援を行っている公認会計士の野瀬大樹です。
3月19日、日本でも報道されていたように岸田首相がインドを首相として初めて訪問しました。ウクライナ情勢が緊迫する中での訪印でしたので、どのような話合いがなされるか注目されていました。今回はインドのマスコミにて報道された今回の日印首脳会談の内容について要点をおさえたいと思います。
ウクライナ問題は言及無し、最優先課題は経済協力
岸田首相のインド訪問は基本的に好意的に報道されています。首相としてはインド初訪問ではあるものの、岸田氏個人としては長く外務大臣や自民党の要職をしていたため、すでにモディ首相とは4回以上も会っており、経験豊富な政治家である点がまず紹介され、今年が日印国交樹立70周年である点も加えて強調されていました。
また、会談の内容としては、
・「自由で開かれたインド太平洋」という関係のさらなる深化
・安全保障面での連携の強化
・上記に合わせての外務・防衛面における2プラス2会談の開催
・5年で5兆円のインド投資、3000億円の円借款の約束
・CO2削減問題についての連携
などが話し合われたと報道されていました。特に5兆円のインド投資については大きく報道されており、大きな投資や雇用を生むことができると現政権の成果として強調されていました。
そして、この時点でお気づきのように、今回の岸田首相の訪印と関連付けてのウクライナに関する報道は一切なしです。議題に上がらなかった事は無いと思うのですが、やはり従来よりロシアと良好な関係を続けてきたインド側が、このウクライナの件に関しては日本政府の方針とは距離をとりたいと考えていることが透けて見えます。
このあたりは、国境問題もあるため「対中国」という点で「自由で開かれたインド太平洋」や「クアッド」で日本と連携をとる姿勢を明確にしているインドが、「対ロシア」では中立的な立場を堅持したいという姿勢が再確認されました。
ある意味インド外交の強かさとも言えますが、私個人的にはやはりインド政府やインド国民が強く興味を持つのは「経済」なのだと再認識しました。
良い意味でも悪い意味でも、インドの国民性はそのあたり是々非々というかドライで、イデオロギーというよりは「インドの国益」をしっかり考えて外交方針を決めている印象を受けます。
これはだからといって残念という話ではなく、インドが経済面での連携を好むのであれば、日本もまずは経済面でインドとの結びつきをしっかり作った上で、次の関係を強化するステップに進めば良いのだと思います。
まとめ
・インドでも岸田首相の訪印は比較的大きく報道されていた。
・内容としては経済中心で、やはりウクライナの件についてはインドは中立を保ちたい模様。
【プロフィール】
野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士
大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。
事務所HP:http://in.nacglobal.net/