はじめまして。このたびこちらで記事を書かせていただくことになりました、弁護士の瀧澤 渚と申します。外資系法律事務所での勤務経験を経たのち、現在は、大阪と東京に拠点をもつ堂島法律事務所に所属しております。日頃、企業の皆様からご相談をいただくなかで得られる知識を・経験を活かしつつ、法律知識がなくても読みやすい海外法務情報を、弁護士の視点から発信していきたいと考えております。どうぞ宜しくお願い致します。
▼目次
はじめに
外国との取引が当たり前のグローバル時代、ビジネスチャンスを求めていくと、いやおうなしに直面するのが国際取引。ビジネスチャンスを逃さず、グローバル企業と取引をしたい。でも、国際取引となると言葉の壁はもちろん、法律・文化・習慣もそれぞれ違うのでハードルが高い。ましてや、取引の相手方から英文契約書が送られてきて、それを自分が見ることになったら…?法律も関わってくることで、ますますハードルを高く感じてしまいそうです。
そこで、この連載では、はじめて海外取引に携わる方や、交渉の最前線にいるが法務のバックグラウンドがなくスキルアップを図りたい方、新入社員の方等、これから英文契約書について勉強していこうとしている方をターゲットに、契約書とは何か?というところから、英文契約書を通じて海外取引をスムーズに行うためのTipsを発信していくことにしたいと思います。
契約とは?
そもそも、契約とはどういったもので、いつ成立するものなのでしょうか。
契約とは、対立する当事者の意思表示の合致によって法律効果が発生する法律行為をいいます。つまり、一方当事者が相手方に一定の条件を提示(offer)するだけでは契約にならず、相手方がその条件を承諾(accept)して初めて、ひとつの契約が成立します。
では、契約が成立するために、契約書は必要なのでしょうか。国や契約の内容によって多少の違いはありますが、契約書は、契約が成立するために必ずしも必要なものではありません。「これください。」「わかりました。」といった口頭のやり取りだけでも契約は成立しうるのです。
しかし、ビジネスでの取引は、私たちが普段、近所のコンビニエンスストアで買い物をする時のように単純ではありません。売買契約を取り上げてみても、取引の目的となる物とその値段だけでなく、いつ引き渡すか、どうやって支払うか、何か商品に不具合があったり相手方が商品の代金を支払ってくれなかったりする場合はどうするか、紛争が生じたらどのように解決するか等、様々なことについて取り決め、交渉する必要があります。引渡しまでに時間がかかり、商慣習も異なる海外取引等、リスクの大きい契約においてはなおのことです。そして、最後に、合意した内容を契約書という形に残します。契約書とは、いわば、交渉担当者の汗と苦労の結晶です。このように、契約書を作成して後々のリスク回避を図ることは、海外取引では重要なキーポイントです。
したがって、理論上は口頭の約束でも契約が成立しうるとしても、海外取引においては、契約書をきちんと作成し、それに双方の当事者がサインしたときに契約を成立させるという気構えで行動することが必要だといっても過言ではありません。
契約書とは?
では、契約書とは何なのでしょうか。先ほど少し触れましたが、契約書とは当事者が合意した内容(=契約内容)を形にしたものです。
その形式は基本的には自由で、しっかりとした紙にぎっしり条件を文章で詰め込んだものであっても、裏紙に走り書きで内容を箇条書きで記載したものでも構いません。
このように、契約書は特定の形式があるものではありませんし、何が契約書にあたるかという明確な基準はありません。
海外取引の場合であれば、その国その国で、契約書のスタイルにも様々なバリエーションがあることが考えられます。
例えば、英文契約書でいえば、相手方から渡された書面に“contract”や“agreement”というタイトルが付されていれば、それが契約書であるということは、わかりやすいかと思います。しかし、“Letter of Intent”(契約意図表明状、念書等様々に訳されます。)や“Memorandum”(メモ、覚書)というタイトルの書面であっても、記載されている内容やそれまでのやり取りの経緯等によっては契約と認められることもあります。
ですから、海外取引に携わる方は、取引先から送られてきた書類が契約書にあたらないかについて、気を配っておく必要があります。少しでも不安に思うときは、取引先に対し、どのような意図で送ってきたのかを確認し、必要があれば、当該書面に法的拘束力を生じさせるものではない旨の追記をしてもらったり、相手方担当者の回答内容を記録・保存したりしておくと安心でしょう。
まとめ
・契約とは、当事者が合意した内容のことをいう。
・契約書は、契約の内容を形にしたものであり、決まった形式はない。
・海外取引においては、契約の内容を契約書という形で残しておくことが重要である。
<プロフィール>
弁護士法人堂島法律事務所(東京事務所) 弁護士 瀧澤 渚氏
慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2014年弁護士登録。外資法律事務所勤務の後、2016年より堂島法律事務所所属。企業法務・労務を中心に、英米法等の海外法務にも精通。
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