これまで、60後(リウリンホウ)、70後(チーリンホウ)、80後(バーリンホウ)の各世代の中国人とのビジネス上の付き合い方として、接待でのお酒と食事のマナーについて紹介しました。三回目となる今回は、中国人ゲストを招いたり、接待するときに役立つ基礎知識を紹介します。
中国人ゲストを接待するとき、リーダーの面子(メンツ)をつぶさない気遣いは基本中の基本です。誰が一番偉いのか、その次に偉いのは…、ゲスト達に正確な序列をつけながらもてなす事が失敗しないためのポイントです。
▼目次
[60後・70後の接待] — 一番前に居る人が一番偉い人 —
中国人ゲストが数人で移動する時、多くの場合リーダーが一番先頭を歩きます。これは「歩くときは目上の人が先」という中国人の古くからの習慣に基づいたマナーです。
以前の職場で、私のボス(日本人)が中国の現場を視察に来た際、私が先導してボスを現場に案内したところ、現場の中国人はみな、私の部下が視察に来たと勘違いしていました。見た目の年齢の印象よりも現場での対応を重視して、前を歩いていた私が上司だと考えたのです。
中国人リーダーのメンツをつぶさないように、いかなる場合も一番前を歩かせるようにしましょう。
[60後・70後の接待] — 車に乗る時の特等席は… ー
中国で接待を受ける際、車での送り迎えの場面では必ず助手席を勧められます。タクシーでも、ハイヤーでも同じで「後ろの席のほうがゆったり座れるのに…」と不思議に思っていましたが、しばらくして中国では助手席が特等席だと分かりました。
これには色々な説がありますが、先述した「目上の人の前を歩くのは失礼」という考えから派生した習慣で、運転手を自分の前に座らせないという考え方からきたものと聞きます。
ゲストが2人以上の場合は、助手席にリーダーを、後部座席にその他のゲストを乗せます。後部座席に2人以上乗る場合は、後部座席がどうしても狭くなるので、リーダーはゆったり座れる助手席を好むということも理由の一つです。(不可解な事に、1人で車に乗る場合もやはり助手席を選ぶのですが…)
中国人ゲストを車に乗せる際は「安全な後部座席にゆったりと座ってもらうのが日本式のおもてなしですよ」と一言伝えてから後ろの席を勧めるのが粋な気遣いだと思います。
役職や職業名をつけて呼ぶ習慣
中国では、名前の後ろに肩書きや役職を付けて呼ぶ習慣があり、これは年代に関係なく中国社会で古くからあるものです。
職業名の場合は、老師(先生)、大夫(医者)、工(エンジニア)、司机(運転手)などを名字の後に付けます。
役職の場合、総経理(社長、総支配人)、経理(社長または事業部長)、総(支配人または事業部長)、科長(課長)、主任(主任)、董事長(専務・常務・取締役など)という具合にとても複雑になります。
例えば、張(ジャン)さんであれば張経理(ジャンジンリー)、張総(ジャンゾン)等と呼びます。
副社長にわざわざ副をつけて呼ぶ習慣が無い会社も多く、副社長も「経理」と呼ばれていることもあります。
また、張総経理を略して「張総(ゾン)」と呼ぶ会社もあり、会社によって習慣が異なるため、役職の呼び名だけで社内の序列を判断するのは難しい事です。社長は改まった呼び方で「総経理」、社長以外の序列が分からない場合は、全員「経理」や「総」と呼んでおけば問題ないでしょう。
[80後の接待] —若くても「○○総(ゾン)」には手厚いおもてなしを—
私が中国ビジネスで出会った若いエリートたちの多くは、社内で「総(ゾン)」と呼ばれていました。最初は一体どういった役職なのだろうという疑問を持ちながら付き合っていましたが、この「総」はどうやら『責任者』など、いろいろな役割に便宜的に使われる呼称のようです。
地方企業の場合であれば社長の息子、すなわち二代目という人もいました。彼らのような人々は家柄がよく、海外留学経験もあり、英語も堪能で、通訳を介さず積極的に英語でコミュニケーションすることもありました。
このような「総(ゾン)」、エリート達は将来会社を担う存在になるかもしれません。もし接する機会があったら、今のうちから手厚いおもてなしをして関係を深めておきましょう。
まとめ
中国人は名字の種類が少なく、社内に同じ名前の人が多いため、ビジネスの場で紹介を受けても、顔・名前・役職が一致しないことがしばしばあります。
どのような場合でも、一番偉い社長やリーダーだけははっきりと区別が付けられるようにし、もしその他の中国人ゲストの序列が付かない場合は同等に、もてなしましょう。
中国人はメンツをとても重要視しますから、文化や習慣の違いを理解し、それを気遣った上で日本式のおもてなしをすればうまくいくはずです。
前回はこちら→各世代の特徴別に攻略!中国人ビジネスマンとの「お付き合い」~接待の食事編~【60後・70後・80後】