中国ではここ数年不動産投資が活発に行われてきました。ところが2013年下半期からは、不動産市場が陰りを見せています。このまま地価が下がり、不動産バブルが崩壊するのではないかとの懸念が強まっています。
なかでも不動産投資を牽引した地方政府と、積極的に融資を行った金融分野は、不良化の恐れのある資産を大量に保有していると言われています。
チャイナリスク連載第3回となる今回は、不動産バブルを生み出した要因のひとつであり、リスク顕現化の場合には甚大な被害を受ける可能性の高い、「金融システム」について考えてみましょう。
▼目次
地方政府と金融システムに潜むリスク
2008年秋、米国でリーマンショックが発生しました。その規模は100年に一度とも言われ、世界経済を震撼させました。
中国でも、リーマンショックに伴い発生した世界同時不況を脱するために、「4兆元投資」(約78兆円)が行われました。
この「4兆元投資」とは、鉄道・道路などのインフラや不動産市場へ集中的に投資を行い、景気浮揚が図るというものです。
ところがその結果、地方政府は野放図な開発を行い、金融機関がその資金の融資を行うこととなりました。不動産市場が右肩上がりであるうちは問題は表面化しませんが、中国全土で不動産価格が下落に転じた今、
不透明な「影の銀行(シャドーバンキング)」の実態
中国の一般個人投資家は、この「影の銀行」が提供する、高利回りの金融商品(=理財商品)を積極的に購入しています。
(用語説明)理財商品
理財商品とは、主に中国において取引される高利回りの資産運用(投資信託)商品で銀行以外の金融機関が取り扱っている場合が多い。元本保証の無い商品であるが、損失補填がなされることもあるとされる。地方政府や不動産開発等に投資され、不動産バブルを引き起こしている点が指摘されている。
もちろんこの「影の銀行」の事業は金融当局の十分な監視下にないため、業務の実態が不安視されています。
「影の銀行」が理財商品により集めた資金は、IMFの試算によると460兆円にも達するとされており、その多くは地方の不動産開発に流れ込み不動産バブルを生じさせる背景となっています。
金融システム改革
中国経済の問題として、国有企業が守られ民間企業の育成が遅れていることも挙げられます。
特に金融、鉄道、石油、鉄鋼などの主力産業では国有企業を守る為に様々な規制があり、この規制が民間企業の進出を拒み、また国有企業の幹部の腐敗の温床になっています。
実際、大手国有銀行の保護を目的として預金金利を低く、貸出金利を高く設定するような規制が設けられています。
今後、中国において自由で効率的な経済発展の重要性が言われていることから、金融規制緩和が優先課題となります。このような状況はかつての日本にもありました。さしずめ、金融自由化が進む直前の1970年代の後半と言ったところでしょう。
不動産市場の動向には要注意
どの国においても金融機関が保有する不良債権は、リスクが表面化した時は既に手遅れと言った場合が多いと言えるでしょう。事前にリスクを知るのが最大の解決法ですが、統計資料の信頼感が確立されていないだけに難しい問題と言えます。
ただ全国の地価動向については、全国70地点の価格動向(中国70大中都市不動産販売価格指数)が中国国家統計局から四半期毎に公表されているのでそれを利用することが可能です。
ともかく中国における金融機関や地方政府を直撃する可能性の高い不動産市場の動向には充分に注意を払う必要があるでしょう。
●コラム筆者プロフィール●
名前:テムジン
リスクマネジメント界のチンギス・ハンです。
一言:迷える子羊たちに、世界各国のカントリーリスクを 分かりやすく説明します。 |