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中国の政治・経済・社会リスクとは-「中国の夢」と現実

      2016/02/18

こちらは「チャイナリスク」に関する全6回のシリーズ記事です。リスクを構成する要因と、その背景を解説します。
前回のおさらいをすると、海外取引の上で注意すべきリスクは3つに分類されます。
【カントリーリスク、信用リスク、市場リスク】前回の記事はこちら
第2回では、チャイナリスクのひとつ、中国のカントリーリスクを紐解きます。

 

はじめに:「中国の夢」は現実のリスクの裏返し

習近平(シーチンピン)国家主席率いる指導部が発足して2年が経過しました。習主席は、就任直後から「中国の夢」を語っています。

「中国の夢」というスローガンが表す具体的な内容は、

共産党創立百周年(2021年)までに国民総所得(GDP)を2010年の2倍にする
建国百周年(2049年)までに「民主的で文明的なゆとりある社会」を作る

となります。

「中国の夢」は「アメリカンドリーム」を明らかに意識していると言われます。

ただし後者が個人の夢であるのに対し、前者は国家の夢であるところが決定的な違いです。

そして指導部が「中国の夢」を語るということは、その裏返しとして足元に厳しい現実があること、その現実には様々なリスクの芽が隠れていることを示しているのではないでしょうか。

それでは「中国の夢」という理想と、現実との間に横たわるチャイナリスクについて、構成要因である政治リスク・経済リスク・社会リスクに分けて考えてみましょう。

<政治リスク>中国現代史にみる格差拡大と民族問題

毛沢東主導により、共産党一党独裁の国家が誕生してすでに65年が経過しました。
建国直後は、飢餓から脱出するために農業生産が優先されたのですが、
言い換えれば当時は全国民が貧困であり、平等社会の時代だったとも言えるでしょう。
しかし1978年、鄧小平により改革開放経済へと舵が切られ、優先的に沿岸部の経済発展を目指して外資の導入が進められました。
その結果、内陸部との貧富の格差が拡大し、中国社会に著しい格差が生じました。

また共産党幹部などに富が集中したことで、官僚の汚職や腐敗が蔓延しました。経済成長の成果である富や権力・権利の極端な集中は、弱者層による抗議行動や治安悪化といった事態を招いています。

そして漢民族の他、多数の少数民族を抱えることも民族問題を招いています。

格差拡大に民族問題も加わって、国家の分裂や破綻リスクは、建国以来から現在にいたるまで消えることはありません。

<経済リスク>「新常態」への移行に伴う経済リスク

 中国経済の高成長を支えてきた「輸出・投資主導」

そこで、政治リスクを回避する最善策として、雇用を増大させ、国民生活を安定させるために国家主導による経済の高成長が推進されました。

実際、過去30年にわたって、中国経済は輸出・投資主導により年率10%程度の成長を続けてきました。それが今や、環境問題や労働コスト上昇などの問題により、ひたすら成長を追い求めることは難しくなっています。

今後中国が目指す「消費主導」への成長構造の転換

個人が豊かになってきたこともあり、中国は今後、内需中心・消費主導による経済成長を目指すことを表明しています。

輸出・投資主導の「高速成長」から内需中心・消費主導での「持続的成長」への転換を、李克強首相は2015年3月開催の全国人民代表大会で、「新常態」(ニューノーマル)と表現しました。

成長に息切れが見られる中での「新常態」への移行は、目標とする7%成長を下回り、中国経済の底割れを招く可能性があります。

またその場合、中国経済に依存する他国の混乱を招くという懸念もあります。

<社会リスク>成長の土台を揺るがす2つの人口問題

中国の高速成長の原動力のひとつには、世界最大の人口が挙げられます。しかし現在、中国は2つの人口問題に直面しています。

労働人口の頭打ち

これまで農村から都市部へは、出稼ぎ労働者(農民工)が大量に供給されました。
しかし農村の余剰人口は底をつき、工場労働者が不足状態となっています。

これは開発経済学で「ルイスの転換点」と言われるもので、今後は賃金の上昇が予想されます。

用語解説:ルイスの転換点

英国の経済学者、アーサー・ルイスによって提唱された概念で、工業化の過程で農業部門の余剰労働力が底をつくこと。

工業化前の社会においては農業部門が余剰労働力を抱えている。工業化が始まると、農業部門から都市部の工業部門やサービス部門へ余剰労働力の移転が起こり、高成長が達成される。

工業化の過程で、農業部門の余剰労働力は底をつき、工業部門により農業部門から雇用が奪われる状態となる。この底を突いた時点がルイスの転換点でそれ以降は、雇用需給が締まるため、賃金率の大きな上昇が起きる。

 

高齢化問題「未富先老」

第2点が高齢化問題です。
「一人っ子政策」も相まって、「未富先老」つまり中国は豊かになる前に老いてしまうのではないかとの懸念が高まっています。

 

今回は中国の政治・経済・社会が有するリスク=カントリーリスクについてご説明しました。
中国国内メディアでは「中国の夢」として明るい未来が語られていますが、客観的に見れば、足元に様々なリスクが存在していることは明らかです。やはり世界10大リスクのトップは中国と言われるのもやむを得ないと言えます。

中国への進出、また撤退にあたっても、今回ご説明したようなリスクの構成要素は押さえておくべきポイントでしょう。

risk_profile ●コラム筆者プロフィール●

名前:テムジン
リスクマネジメント界のチンギス・ハンです。
一言:迷える子羊たちに、世界各国のカントリーリスクを
分かりやすく説明します。

海外取引に関するリスクを分かりやすく紐解き、組立て、解決するWEBサービス CONOCER(コノサー)

 

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