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原油価格の下落は、国内経済にプラスなの?
思い起こせば、約1年前の2015年1月9日の会見で、甘利経済再生担当大臣(当時)は「原油価格が1バレル約100ドルだったピーク時から3割下がると4兆円程度、国内経済にプラス。現在は5割以上下がっているので7兆円ぐらいのプラスになる」との、内閣府の試算を明らかにしました。
平たく言えば、ガソリン価格の低下、軽油、灯油の価格の低下が、電気・ガス料金などの光熱費の値下がりに波及し、経済活動を活性化することで、身のまわりの商品やサービスも値下がりが広がっていく効果が期待される。そういった内容だったように記憶しています。
そして今、原油価格はさらに下落し続け、いよいよ1バレル20ドル台(2016年2月現在)に突入しています。2月初旬のニュースでは、JAL・ANAなどの海外便の燃油サーチャージが約6年半ぶりに”ゼロ”になるということです。インタビューに答える大学生が「卒業旅行の予算が増えて助かります」と笑顔で答えていました。
「本当に良いことずくめじゃないか!」と喜んでいるみなさん。果たして、本当にそうでしょうか?
実は、原油下落の「負の影響」が米国で出始めています
「でもアメリカでしょ?」という皆様へ。
「アメリカがくしゃみをすれば日本が風邪をひく」と言われる日本で、いまアメリカでおこっている原油価格下落の負の影響を「風が吹けば桶屋が儲かる」的に、メディアの様々な記事を参照しながら整理したいと思います。
<ステップ1>原油価格が下がるとアメリカのシェール企業の経営が危機に瀕する…
【たとえばこんな記事があります①】
・(前文略)既に限界までコストを切り詰めていた業界にとって、原油価格のさらなる下落は壊滅的な打撃となっている。ウッド・マッケンジー(ヒューストン)の上流(開発・生産)担当シニアアナリスト、R・T・デュークス氏はこれらのシェール層掘削会社について、「原油価格が30ドル台の環境を生き残れるような態勢にはなっていない」と指摘する。
・米エネルギー情報局(EIA)は、米国のシェール層で操業している企業が来年、生産を過去最大の日量計57万バレル削減すると予想している。
・(中文略)米サムソン・リソーシズやマグナム・ハンター・リソーシズなどの掘削会社は既に、連邦破産法11条に基づく会社更生手続きの適用を申請している。
【情報ソース】Bloomberg.co.jp 2015/12/28
≪http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O01LOE6JTSEH01.html≫
<ステップ2>米国シェール企業の多くが倒産となれば、ジャンク債の市場がパニックになる…
【例えばこんな記事があります②】
・投機的格付けを付与されたジャンク債が米国のシェールオイル・ブームを金融面で支援している。だが原油価格の急落で、こうしたハイイールド債(ジャンク債)の大量デフォルト(債務不履行)が起こる可能性が出てきた。
・(中文略)エネルギーはハイイールド債市場の最大セクター。その存在は突出している。
【情報ソース】THE WALL STREET JOURNAL 2014/ 12 / 2
≪http://jp.wsj.com/articles/SB11920364258490754648804580311712210424450≫
【例えばこんな記事があります③】
・(前文略)ジャンク債市場はリスク性が高いため、ひとたび市場にストレスがかかると流動性が蒸発し、市場関係者の間でパニックが起きやすくなる。
【情報ソース】JBPRESS 2015/9/19
≪http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44816≫
<ステップ3>ジャンク債市場でデフォルトが頻発すれば、アメリカ経済で金融危機がおこる可能性が増す…
【例えばこんな記事があります④】
・(前文略)市場には、このジャンク債の動揺に2007年の「パリバ・ショック」を思い浮かべる人もいる。当時、サブプライム・ローン関連の証券化商品に投資していたフランス大手銀行のBNPパリバの傘下にあったファンドが、投資家からの解約を凍結すると発表して市場に激震が走り、その後の金融危機の序曲となった事件である。
・今回はジャンク債が対象であり、サブプライム・ローンとは異なるが、同じ「クレジット市場」の仲間での現象であり、類似性は確かに高い。金融危機の引き金を引くのは株価の急落ではなくクレジット市場の崩壊である。利上げ時期と重なったこともあり、嫌な雰囲気が醸成されていることは否めない。
【情報ソース】日経ビジネスONLINE 2016/1/5
≪http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/230160/121800008/?rt=nocnt≫
<ステップ4> 世界金融危機(リーマンショック)みたいことが起こると、アジアや新興国市場に影響が起こる…
【たとえばこんな記事があります⑤】
・(前文略)インドネシアやマレーシアは資源国でもあり、現下の商品市況の調整も、景気低迷や対外収支の悪化につながるとの連想を生みやすい。
・(中文略)海外投資家の間には、こうした国々から資金を引き揚げる動きが出ている。タイやインドネシアは、1997年にアジア通貨危機の“震源”となった国でもあり、投資家の中には根深い不信感があるのだ。
【情報ソース】東洋経済ONLINE 2015/08/29
≪http://toyokeizai.net/articles/-/81383?page=3≫
<ステップ5(最後に)>信用不安の広がりが、世界規模で波及すると…
新興国経済に悪影響が出たときに、日本企業にお勤めのあなたにも決して無関係ではありません。あなたの海外取引先や、その取引先と取引をしている日本企業の業績に大きな影響が及ぶことが明白です。
まとめ
お分かりいただけましたでしょうか?
当然ですが、現在のグローバルなビジネス環境は、いろいろな要素が複雑に絡み合って様々なリスクを発生させます。「対岸の火事」という言葉は世界経済において、もはや存在しないのかもしれません。
そして、すべてのリスクを未然に察知して防ぐことは非常に困難です。おそらくそんなリスクマネジメントを行っている会社は世界中どこを探してもないでしょう。
ただし、、、
その兆候が見えた時に、適切に対応ができる「準備をしている会社」と「準備をしていない会社」が存在します。
その準備の最初の一歩は、情報の収集、整理、管理と共有です。
当社(三井物産クレジットコンサルティング)が提供するコノサーは、その「一歩」目を「正しく」踏み出すためのコンテンツサービスです。ぜひ必要だと思われる担当者の方は以下をご確認ください。長文お読みいただきありがとうございました。
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