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米国リスク【第7回】米国最大のリスクは市場リスクにあり

      2016/02/24

株価チャート

米国の金融・資本市場の発達は世界に類をみないもので、そのシステムは米国の最大の資産です。国際金融システムの頂点に立つ米国に向け巨額の投資マネーが流入し、また米国で調達されたマネーが世界の隅々へと流れていきます。世界経済の安定的成長はこの循環により支えられていると言えるでしょう。

ただその金融・資本市場が人間の「強欲さ(GREED)」に支配されている側面があるのも事実です。リーマン・ショック(世界金融危機)はまさにその象徴的事件だったと言えるでしょう。野放図な金融投資による世界的混乱が再び起きることを避けるために、金融規制を強化する流れが続いています。

果たして、人間の強欲さは、再び米国の金融・資本市場を席巻し国民生活を脅かすことになるのか。それとも新たな金融規制が人間の強欲に歯止めをかけ、米国の金融・資本市場が健全なシステムであり続けることができるのか。連載の最終回である今回は、米国の最大のリスクである市場リスクについて考えてみましょう。

 

世界金融危機をもたらした人間の「強欲さ」

2008年9月にリーマン・ブラザーズが破綻したことに端を発し、百年に一度と言われる未曽有の世界金融危機が発生しました。その発生メカニズムについて様々な研究がなされてきましたが、その背景の一つは富を独占する一部の人々の「強欲さ(GREED)」により発生したものであるとの意見は納得感を持って受け止められています。

1980年代を境に多くの人間が金融投資家として野心的になり、また金融界、政界、学界が一丸となって利益と高報酬を追求する社会となったと言われています。その結果、社会は格差が拡大し、富裕層と中間層・貧困層に国家が分裂する危機に直面することになりました。

1980~90年にかけ米国は金融国家を目指して舵を切りました。この時代はアポロ計画が中止となりロケット・サイエンティストがウオール街に流れ込み、金融工学が急速に発展した時代と符合します。その結果、スワップ、オプションなどのデリバティブをはじめとして金融技術が進展し、金融の世界に革命が起きたのです。

規制緩和と金融システムの転換

米国では、1929年の大恐慌の反省を踏まえ、銀行・証券業務を分離するグラス・スティーガル法が制定され、金融機関に順守させることで一定の節度が保たれてきました。

ところが、金融界が急速に進化し、レバレッジを効かせた様々なリスク商品が開発されているまさにその時、米国で金融規制が緩和されました。1999年グラム・リーチ・ブライリー法が発効し、銀行・証券の垣根が取り払われ、また「政府による規制」から「市場による監視強化」へと金融システムの転換が図られたのです。

この結果、銀行・証券・保険の一体経営が進み、さらに自己勘定での金融商品の短期売買やヘッジファンドへの出資、さらにはリーマンショックの引き金となったサブプライムローンなどのリスク投資が拡大しました。このように法律の改正、そして金融技術の進展が相まって、世界金融危機発生の土壌が作られたと言ってよいでしょう。

この反省を踏まえ、オバマ政権下では金融機関の安定経営を進めるために金融制度改革法(ドッド・フランク法)が成立しました。また、ボルカー元FRB議長を中心に金融機関のリスクを制限するようにボルカールールが実施されることになりました。果たして、法律により金融機関を規制し、投資家のリスクテークを自重させる試みは上手くいくのでしょうか。

株価は金融危機以前の水準に回復

リーマンショックから7年が経過しました。NYダウ平均株価は当時の底値6,500水準から回復し、2015年には18,000台を超えて史上最高値水準を回復しました。この株価上昇は3度にわたるQE(量的緩和)政策によるカネ余りによるという見方もあり、既にイエレン議長が割高を懸念する発言をしています。果たしてどうなるでしょうか。

「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観と共に成熟し、幸福感の中で消えて行く」

との米国の著名投資家ジョン・テンプルトンの名言を起こさせる展開とも言えます。

まとめ

金融技術は日進月歩で進化し、とめどなく発展を続けています。「貪欲」をエンジンにして企業そして投資家は利益追求の行動を続けています。とすれば、法律やルールにより金融機関に網を掛けるのは容易ではないのは言うまでもありません。

いつなんどき、世界金融危機の再来があるかも知れませんが、なかなか市場の潜在的なリスクを把握することが難しいことはリーマン・ショックの時に学んだ通りです。米国の最大のリスクは市場リスクであることを認識しておくべきでしょう。

risk_profile ●コラム筆者プロフィール●

名前:テムジン
リスクマネジメント界のチンギス・ハンです。
一言:迷える子羊たちに、世界各国のカントリーリスクを
分かりやすく説明します。

 

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