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海外取引において契約書を作る意義(弁護士 瀧澤渚)

      2016/08/22

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海外取引において契約書を作成するメリットとは?契約書がどんな時に役立つのかを具体的にイメージできるようにし、契約書の内容を確認する際の姿勢や視点を変えていきましょう。

契約書は、取引のマニュアル

海外取引では、場所が離れているため輸送に時間がかかったり、直接会って話すのが難しく交渉に長く時間がかかったりする等、取引や交渉の期間が長くなる例が多くみられます。そうすると、取引をしているうちに、「支払いはどのタイミングで行うのだっただろうか?」「どのような場合に契約を解除できるのだっただろうか?」など、契約内容の細部について、記憶が薄れてしまうことがあります。また、交渉にあたった者が他の部署に異動してしまい、何か問題が生じた際には担当部署に在籍していないということもあります。

こうしたときに、メールや注文書、請書等の過去の書面を手繰っていって合意した内容を確認しなければならないのでは、合意した内容がどのようなものであったか結局わからなくなってしまう場合もあるでしょう。また、わかったとしても時間がかかってしまい、守らなければならない期限や、権利行使ができる期間を過ぎてしまうというリスクもあります。

しかし、そんなとき契約書があれば、契約当時、契約当事者が何を合意したのかということがいつ誰が見ても明らかです。

このように、契約書は、時間が経っても、担当者が変わっても、いつ、何を、どのように取引し、何か問題があった場合にはどのように解決するのかといった契約の内容を、正確に理解できるようにするためのツールです。その意味で、契約書は、その契約の対象である取引に関係する人達にとって、取引のマニュアルとしての機能を有します。

契約書は、契約内容を明確にする

海外の取引先と取引をするに際してリスクとなるのは、取引先の国の法律や商慣習、文化が日本のそれとは異なるため、思わぬところで前提や認識内容の食い違いが生じうるということです。日本では「当たり前」のことが、取引先にとって「当たり前」のこととは限りませんし、その逆もしかりです。書かなくてもわかる、という感覚は通じないと考えましょう。

しかも、国が異なれば、その距離的障害から、相手と直接コミュニケーションをとる機会が少なく、前提や認識内容の食い違いを発見する機会も乏しくなります。

そこで、契約書を作成して、当たり前と思われるところも含めて、契約の条件を書き出していけば、思わぬところに食い違いがあってもそれに気付くことが可能です

また、海外取引となると、交渉も日本語ではなく英語で行うことの方が多いでしょう。そういったときに、口頭やメール等の簡易なやり取りで終わらせず、合意内容をきちんと文章にすることで、あいまいだったところや、わかりにくかったところを形にし、明確にすることが可能です。このことは、英語圏の取引先はもちろん、非英語圏の取引先と契約を結ぶ時であればなおさらです。契約書を作成して文言を詰めることで、お互いにネイティブではないことから生じる誤解のリスクを最小限に抑えることにつながります。

このように、契約書を作成することを通じて、契約内容を明らかにし、後日食い違いを原因とする紛争が生じるのを防ぐというメリットを得ることが期待できます。

契約書は、自分の身を守る盾

契約交渉をしているときは、これからの新しいビジネスの実現や、新しい商流の構築といった方向に関心が向きがちです。そのため、つい、きちんとした契約書の作成よりも、取引をできるだけ早期に開始することを重視してしまいたくなってしまうこともあるでしょう。

しかし、例えば、取引開始後、取引先が、契約当時の合意内容を上回る要求を突然してきたらどうでしょうか。こんなとき、もし契約書があれば「その要求には応じられない。契約の内容ではない。第○条を見てほしい。」といって 取引先の主張を突っぱねることが可能です。しかし逆に契約書がなければ、「そういう約束をしたじゃないか」などと取引先に言われるなどし、言った言わないの水掛け論になってしまうかもしれません。

また、もし契約書があれば、そもそも取引先はそのような要求をしてこないかもしれません。取引先の側で、契約書に書いてある内容を上回る要求をしても、応じてもらえないと判断するであろうからです。

このように、契約書があれば、合意した内容以上の負担を負うリスクを減らし、紛争を事前に予防することができるのです。海外取引で紛争が本格化すると、場合によっては、外国で裁判をしなければならず、現地の弁護士を雇ったり、裁判資料の翻訳をしたりしなければならないなど、コストがかなり高くつくので、紛争のリスクを事前に抑えておくことが非常に大切です。

さらに、契約書は、裁判等の紛争解決手続きにおける証拠としても使うことができます。当事者での話し合いの解決が望めなくなり、裁判所で争うこととなった場合、第三者である裁判官に契約の内容を正確に理解してもらうには契約書を提出するのが一番良い方法です。

逆に言うと、契約書は裁判の証拠としても使われるものですから、相手方から出された契約書を英語だからと言ってあいまいに理解したまま、「まあいいか」と署名してしまっては、後から「そんな条項があったなんて知らなかった」と言っても、そのような言い訳が通じず、後悔することになりかねません。契約書に署名するときは、きちんと内容を理解しておく必要があるので要注意です。

まとめ

・契約書は、時間が経っても、担当者が変わっても、いつ、何を、どのように取引し、何か問題があった場合にはどのように解決するのかといった契約の内容を正確に理解できるようにするためのツール。

・契約書を作る過程を通じて、契約内容についての思わぬ誤解を防止することができる。

・契約書は、裁判における証拠になる。

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