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回復が強調されるインド経済

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インドで広がる「ignore コロナ」

インドで日本企業の進出支援を行っている公認会計士の野瀬大樹です。

年末、1年振りに日本に帰ってきました。1年も日本から離れていたので日本のコロナや経済の「感覚」が分からなかったのですが、実際に2週間ほど自宅でテレビを見ていると何となくその「感覚」が分かってきました。

最もひどい時には、一日10万人の新規患者を記録していたインドから帰ってくると、患者数は人口比を考慮しても少ないし、医療施設が比較的充実している日本の状況はコロナに関して言えば「まだまだ余裕がある」ようにすら見えます。一方でそれと表裏一体とも言える経済に関して日本は悲観的な報道が多く、バブル後最高値を記録した株式相場とは全く違う「感覚」がそこにはあります。

一方のインドはコロナでも経済でも比較的ポジティブな報道が目立ち、

・新規患者数が減っている
・回復者が新規患者数を上回った
・自動車販売がV字回復している
・国連のレポートでも南アジア・南西アジア地区で最も回復が著しい地域とされた
・金融機関の不良債権比率が2020年3月の8.2%から7.5%まで急減している

などです。

実際、私がデリーを経つ日にスタッフやご近所さんと話していても、彼らはもうコロナを気にしておらず、2021年はインド経済が力強く復活すると皆信じているイメージです。現地では「ignore corona(コロナを気にしない)」という言葉すらあります。

ただ、そんなインド経済も気になるデータがあります。

急回復している自動車生産台数・販売台数の中で実は「高級車」の売上だけが大きく減少しているのです。2019年には約3.5万台売れたとされる高級車が2020年はたった2万台。他の車種の生産・販売が9月以降大きく盛り返している中でこの数字は非常に気になります。

そしてこのニュースを見て私思い出したのはコロナへの姿勢のインドにおける「二極化」です。

先ほどは「インドはignore corona」だと言いましたが、貧富の差が激しいインドにおいていわゆる「富裕層」だけは、日本と同じくらい皆コロナを恐れています。自分が住んでいる地域に見知らぬ人が入ってくることも嫌い、買い物にも極力出ない。メイドも通いのメイドはクビにするなどです。場合によってはすでにもう海外に避難している人もいます。

一方で大多数を占める中間層以下は「そんなんじゃ仕事にならねえ」とばかりにコロナを気にせず毎日を生活しているように見えます。
前回もお話しましたが、結婚式も大人数でやり、新年のパーティーも政府から禁止されているのにやる…そんなイメージです。

私はインドのこの「ignore corona」という姿勢には当初批判的だったのですが、ポジティブに日々の経済活動をする周りのインド人を見て「このまま集団免疫獲得までいけば実はこのやり方が正解ではないか」と考えを改めるようになりました。

しかし、未だに中間層が育ち切っていないインドにおいて富裕層の消費マインドがまだ低いというのは回復基調と言われる経済にブレーキをかける可能性があります。インドの国産ワクチンが緊急承認されるというニュースも流れてきましたが、この「ignore corona」が富裕層にまで拡大してインドの経済の力強い回復は完成するのではないでしょうか。

まとめ

・政府発表やニュースではインド経済は「回復基調」
・ただ、富裕層関連のマーケットはまだまだ冷え込んでいる。

【プロフィール】
野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士

大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。

事務所HP:http://in.nacglobal.net/

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