インドメディアで評価された安倍首相の功績とは?
インドで日本企業の進出支援を行っている公認会計士の野瀬大樹です。
8月28日に発表された突然の安倍首相の退任は、インドでも比較的大きなニュースとして取り扱われました。もちろん印米関係や印中関係に比べると小さな扱いですが、日本の首相動向が写真付きでインドの紙面で扱われることは安倍首相以前はなかったことですので、その意味でも安倍首相の存在は大きかったのだと実感します。
モディ首相はすぐにツイッター上で「親愛なる友人、安倍首相。あなたの病気の件を聞き心が痛みました。 近年のあなたの賢明なリーダーシップその仕事ぶりにより、日印のパートナーシップはこれまで以上に深く強力になりました。 1日でも早い快復をお祈り申し上げます。」と声明を出しました。
加えて私も興味があったので、インドの新聞やニュースで今回の件がどのように扱われているのか一通り眺めてみました。安倍首相の辞任自体はただの「事実」であるので、賛否が分かれるその「業績」や「政治家としての評価」がインドにおいてどのように書かれているのかについて注目しましたが、日本での評価同様その内容は2つに大きく分かれていたように感じます。
例えばThe Economic Times紙シンプルに
- 日本では珍しい長期安定政権を維持した
- アベノミクスにより日本経済をデフレの危機から救った
- 難しいアメリカのトランプ政権への対応を乗り切った
- 悪化していた中国との関係を改善した
との内容を記事にして、どちらかというと肯定的な評価であったのに対し、
The Indian Express紙では、批判的な論調が目立ち、まとめると
- 強い保守政治家として知られ、歴史修正主義に傾倒している
- アベノミクスという攻撃的な経済政策で知られ
- 中国・韓国・北朝鮮に対抗するために、ASEAN、インド、豪州との関係を強化
- 一方で中国との関係改善には成功した
- ただし、コロナ対策では批判が多い
- 憲法改正により日本が軍隊を保有できるようにしようとしていた
という論調でした。日本が対抗しようとしている国の中に中国・北朝鮮に加え韓国が入っているのは少し認識が間違っている気もしましたが、その他の批判的な内容は日本国内での批判的内容とほぼ同じなのかなという印象です。
アベノミクスやコロナ対策については評価が分かれると思うので、私もこの点についてはThe Indian Express紙の意見に同意しますが、印象的だったのはこれだけ意見が違う2つの紙面でも安倍氏が「中国との関係を改善した」との評価は一致している点です。
日本ではそう言った点での評価を受けている印象はほとんどないですが、外から見ると安倍首相にはそう言った評価があるのだということを認識しました。
まとめ
・安倍首相退任のニュースはインドでも比較的大きな扱い
・日本同様、肯定的評価と否定的評価に分かれる
・「中国との関係改善に成功した首相」という認識が一般的な模様
【プロフィール】
野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士
大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。
事務所HP:http://in.nacglobal.net/