5月3日までの延期が決まったインド都市封鎖
インドで日本企業の進出支援を行っている公認会計士の野瀬大樹です。
前回このコラムでもお伝えしましたように、インドは4月14日まで全土が都市封鎖いわゆる「ロックダウン」になっていました。
私はインドにおいてはこの方法でしか感染拡大は防げないと思っていたので、当初この政府の決定を歓迎していたのですが、4月24日現在も新型コロナウィルスの感染者は増え続けています。患者数は累計2万を軽く超え、死者数も700名を超えています。
その結果4月13日にはロックダウンの再延長が発表され、私含むインドに在住する人は食料品や医薬品の買い物以外での外出は原則5月3日まで禁止となっています。
メイドやドライバーがいるのが前提で成り立っているインドでの私たち日本人の生活をベースに考えると、ロックダウンにより彼ら彼女らが消えるというのは相当なインパクトがあり、現地に残っている日本人駐在員の人達は、家族も帰国している中、慣れない掃除・家事などに加えて、炎天下徒歩での食料買い出しに行かなければならず厳しい状況に置かれています。
また前回もお話したように、現地の医療施設・隔離施設の状況はお世辞にも良いとは言えないので、このあたり感染した場合のリスクにもおびえながら暮らしている方がほとんどです。
今後リスクが高くなる「駐在」というポジション
さてそのような状況に置かれているインドの日本人社会ですが、今後の展望を少し述べたいと思います。
おそらく今回のような事態を受けて、今一時帰国している駐在員、特に帯同のご家族はもうインドには戻ってこないと思います。そもそも生活するのがハードと言われているインドにおいて今回のような感染症のリスクまであると考えた場合、子どもを連れての帯同は避けたいと思うのが人情でしょう。そうなると駐在員ご本人も「単身赴任になってまで駐在するべきか」と考える人が増えるでしょう。
結果、インドは(コロナ以前からそうでしたが)、駐在先としてさらに人気が低い国となり、またそもそも海外との往来がリスクありとみなされて「脱駐在」という流れになると思われます。
具体的には、駐在員を送り込む形ではなく、すでにインド経験があり現地にいる日本人を駐在並みの待遇で現地採用し、インド人だけで回るようにするまで仕組み作りをする…という形が主流になるのではないでしょうか。
今回のこの世界的な新型コロナウィルス問題は、日本企業の働き方にも影響を与えそうです。
まとめ
・インドの都市封鎖は最短5月3日まで延期。
・現地の日本人駐在員は厳しい環境下で暮らしている。
・今後は駐在員になりたい人が減り、プロフェッショナルな現地採用がメインになるのでは?
【プロフィール】
野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士
大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。
事務所HP:http://in.nacglobal.net/