インドで日本企業の進出支援を行っている公認会計士の野瀬大樹です。
昨年インドに進出した日本企業の中でとりわけ話題になったのが「UNIQLO(ユニクロ)」です。
しかも、首都デリー近郊にいきなり大規模店舗を、昨年10月11月に立て続けに3つも出店となかなかの気合いの入りようで、現地でも話題になっていました。
13億人市場を攻めるユニクロの戦略
値段は日本で買う場合と比べて1.5倍と言ったところでしょうか。インドではZARAやフォーエバー21のようなファストファッションはすでに存在していますが、インドの物価水準ではこれらのブランドも「高級品」です。それはユニクロも同様で、ユニクロはインドで「高級品」として中間層~富裕層をターゲットとしています。
私も実際に買い物に行ったのですが、なかなかの盛況ぶりでした。従来、インド人はユニクロのようなシンプルなデザインは好きではないのですが、それでもたくさんのお客さんが店を賑わせていました。ユニクロのインド進出の第一歩はまず成功と言っても良いと思います。
その第一歩が成功した理由ですが個人的には
・最初から大きな投資をして「良い場所」に「大規模店舗」を出した
出店場所は、デリー近郊でも有数の富裕層が集まるエリアであり、おそらく家賃も高いことが予想されますが、ターゲットとしている客層ともマッチし、また目立つ位置にあるので広告宣伝効果も高く、結果として吉と出たように思います。
・ユニクロはインド人の富裕層の間ではすでに認知度があった
「日本に旅行に来たインド人が行きたい店」でもユニクロは良く名前があがります。出店前から流行に敏感なインドの中間層以上の人達にはユニクロはすでに認知度があったことも勝因の一つでしょう。
今後のユニクロの課題
さて、そんなユニクロの今後の課題について考えてみましょう。
実は、まずまずのスタートを切ったインドのユニクロですが事前のリサーチとは売れ行きが異なっていたそうです。
ローカライズできなかったバングラデシュでの失敗を踏まえてインドの伝統的な衣装「クルタ」を作ったのですが、予想に反してこれが全く売れず。また、デリーの冬は寒いのでヒートテックも前面に押し出したのですが、綿の肌触りに慣れたインド人からは敬遠されたようです。
逆に当初売れると思わなかった、フリースやジャケットなどが売れたらしく、インドのような多様性を持つ国でのマーケティングの難しさが浮き彫りになった形となります。
インドは日本と異なり、多様な所得層、民族、言語、風習に加え、広大な国土では気候も大きく異なりますので、今度はインド国内での地域ごとでのローカライズがユニクロのさらなる発展の鍵になると思います。
デリーで良いスタートを切ったからと言って他の州で同じ手法が通じるとは限らないのがインド市場の難しいところですので、今度もユニクロの動向に注目したいと思います。
まとめ
・インドは「多様性」の国なので、所得層・民族や地域に応じたマーケティングが必要
・衣料は特に、文化や風習、気候などが影響するため、インドのような多様性の国ではマーケティングが大変
【プロフィール】
野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士
大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。
事務所HP:http://in.nacglobal.net/