Green Planetさんによる写真ACからの写真
インドで日本企業の進出支援を行っている公認会計士の野瀬大樹です。
先月6月より大阪にてG20 が開催されており、開催国である日本では連日G20の話題ばかりと聞いています。
日本の報道を外務省HPで見ていると、やはり安倍首相とインドのモディ首相との会談は大きく取り上げられており、
その内容としては
・モディ政権の選挙での勝利と日本の令和改元の祝辞
・自由で開かれたインド太平洋構想
・防災面や高速鉄道での両国の連携
あたりが大きく報道されているようです。
日本で報じられなかった「日印首脳会談」での”話題”
インドでも日印首脳会談は大きく報道されており、その内容も概ね上記と同じで、非常に好意的な文面でした。
比較的良好な両国関係が見てとれます。
ただ「モディ首相と安倍首相は古い友人だ」「非常に建設的かつ良い雰囲気の会談だった」というような抽象的な称賛が大量にちりばめられており今一つ具体的な内容に踏み込めていなように感じました。
そして1つだけ、インドでは大きく報道されているのに、日本の報道では全く見ない項目がありました。
それは「経済犯罪者逃亡対策」です。
インドでは2018年6月にこの「経済犯罪者逃亡対策」法案が可決されました。
具体的には脱税含む巨額の経済犯罪でインド当局より指名をうけた犯人が国外に逃亡し出頭命令に応じない場合、裁判所の許可があればその他のあらゆる手続きや、抵当権なども無視してその犯人の資産を差し押さえ・没収できるという法律です。
インドでの報道によると、安倍首相はこの法案の成立を高く評価してモディ首相を褒めたたえたと報道されていました。しかしこの点について触れている日本のメディアは私が調べている限りは皆無でした。
もちろんこれはインド国内の法律で日本に関係ないと言えばそれまでなのですが、この点が各誌面で強調されているようにインド政府はここ数年このような「富裕層の課税逃れ」「ブラックマネー」への対策に非常に力を入れています。
以前インド国内を騒がせた「高額紙幣使用禁止」もこの流れの一環なのです。
G20のホスト国でもあり、経済・防衛でこれから関係を強化しようとしている日本の首相もこの「経済犯罪者逃亡対策」法案を支持しているのだとアピールしたいインド政府の思惑があったのでないかと推測されます。
このように同じニュースでも日本とインドでその報道のされかたが異なるのは非常に興味深いですので、今後もおなじようなことがあったらお知らせしたいと思います。
まとめ
・日印首脳会談は現地インドではかなり好意的に報道されていた。
・インド側が大きく報道していた「モディ政権のブラックマネー対策」については日本では一切報道されていなかった。
【プロフィール】
野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士
大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。
事務所HP:http://in.nacglobal.net/