海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
2025年10月9日からキャッチオール規制が見直され、より厳しく運用されます。特に、各国際輸出管理レジームに参加し、輸出管理を厳格に実施している「グループ」Aとして区分される27か国向けには、2025年9月時点でキャッチオール規制が適用されていませんが、2025年10月9日の輸出手続きからはグループA国向けであってもキャッチオール規制の対象となる可能性があります。
どういうことでしょうか?
グループA国とは?(経済産業省 地域①)
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/apply08.html
1.キャッチオール規制見直しの背景
安全保障貿易管理において、適切な輸出管理を行っていると考えられるグループA国向けの輸出は、キャッチオール規制の対象から除外されています。しかしロシアがウクライナに軍事侵攻して以来、ロシアが兵器の部品として日本を含む西側諸国の製品を使用しているという報道がありました。その内容は、キャッチオール規制の対象から除外されているグループA国経由でロシアに迂回輸出されたらしい、ということです。現行の外為法ではグループA国経由で迂回輸出の懸念がある場合であっても規制することができないので今回の見直しに至りました。
2.現状のキャッチオール規制は?
キャッチオール規制はグループAの地域には適用されないことが、次の経済産業省資料からわかります。
3.今後のキャッチオール規制は?
2025年10月9日に施行されるキャッチオール規制の見直しでは、グループA国向けに「経済産業大臣からの通知」(インフォーム要件と言います)があった場合には輸出許可申請が義務付けられます。
逆に言えば、グループA国向け輸出では、キャッチオール規制において経済産業大臣からインフォーム要件の通知がなければ輸出許可申請は不要、ということです。
*「インフォーム要件」とは、輸出する貨物又は取引する技術が、大量破壊兵器等の開発、製造、使用又は貯蔵に用いられるおそれがある、又は通常兵器の開発、製造又は使用に用いられるおそれがあると当省が判断した場合に文書にて通知されます(経済産業省ウェブサイトより)。
グループA国以外の一般国や国連武器禁輸国向けの輸出では、輸出者自身で「輸入先等の用途」や「輸入者・需要者の通常兵器開発等への関与」を確認する必要があります。
どういった国・地域向けにどのような確認が必要とされるかは次の図表をご覧下さい。
4.具体的な実務はどうすればよい?
通常兵器キャッチオール規制においては、当該貨物が次の特定品目に該当するかそうでないかを最初に判断します。
次に用途確認、つまり引合い元が通常兵器開発・製造等に「用いる」ことを自社が「知っているか」、を確認します。
さらに引合い元、つまり需要者が、通常兵器の開発等を「行った 又は行う予定」と「知っているか」、を確認します。
*「知っている」とは、契約書等(輸出者が入手した文書等も確認)に記載されていたり、対面、メール等により、輸入者から連絡を受けた状態のことです。
まとめ
2025年10月9日からキャッチオール規制が見直され、グループA国であっても輸出許可申請手続きが必要になる可能性があります。グループA国以外の国や地域でも引合いの用途確認、需要者確認が強化されます。輸出先の調査は取引開始時だけでなく定期的に実施するようにしましょう。それがコンプライアンス意識の高い企業という証になります。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングや研修サービスを、民間企業およびジェトロや大阪商工会議所などの公的支援機関向けに提供している。これら機関向けセミナー実績も多数有する。日本政策金融公庫「輸出ノート」や「輸出コラム」の執筆を担当する。
URL:https://sub.toro-llc.co.jp