海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
財務省貿易統計サイトを検索すれば、HSコードごとに日本からの国別輸出金額や数量(重量など)データがわかります。輸入データも同様です。
しかし、2024年の韓国から米国向けビール輸出統計が知りたい、という場合には日本の税関データでは歯が立ちません。どうしたらよいでしょうか?
日本の輸出入統計データは税関サイトから入手できるが、他国のデータはどうする?
出典:合同会社トロ資料
日本の貿易統計データの調べ方ブログ https://blog.conocer.jp/haga-overseas-sales21/
1.UN Comtradeというサイトを利用します
国連機関が世界の税関データを集約したサイトを運営しています。名付けてUN Comtrade。https://comtradeplus.un.org/
冒頭で述べたように、2024年の韓国から米国へのビール輸出実績をこれで調べることができます。それだけでなく、世界の国々から米国への輸出(つまり米国の輸入)がUN Comtradeを利用することで把握できるのです。
2.まず、UN Comtradeに登録します
UN Comtradeトップページから利用者登録をします。メールアドレスと暗証番号を登録します(上図1)。
登録後にログインします。調べたい項目について1つずつインプット、あるいはプルダウンメニューで選択します。
Annual(歴年)なのかMonthly(月別)なのか、Export(輸出)なのかImport(輸入)なのか、を選びます(上図2)。
HSコードは世界共通の6桁(subheading、号)をインプットします(上図3)。
世界各国との貿易データならばAllを選びます(上図4)。世界各国でなければ個別の国をプルダウンから選びます(上図4)。
向け先国を選びます。Exportならば、Exportの向け先国、この場合米国です。別の言葉で言えば、米国が世界各国からビールをどれだけ輸入しているか国別に金額と重量を調べる、ということです(上図5)。輸出なのか輸入なのかの感覚が通常と逆なのでご注意ください(上図2)。
最後に年をプルダウンから選びます(上図6)。
1から6のインプットや選択をしたら、Previewをクリックします(上図7)。
3.UN Comtradeの検索結果や、いかに?
UN Comtradeのインプット画面が、検索結果画面に変わります(上図8)。実際のデータは画面の下部なのでスクロールします(上図9)。
検索結果データはABC順に国ごとに表示されます(上図10)。
データ整合性を確かめるために、UN ComtradeのJapanデータが日本の貿易統計データと合っているかを次項で確認してみましょう。
4.UN Comtradeと日本の貿易統計データの整合性(説明用の項目です)
*この4項は筆者の説明用に記述するものです。UN Comtradeを利用される皆さんは、UN Comtradeと日本の貿易統計データの整合性を都度確認する必要はありません。
UN Comtradeで2024年のJapanからUSAへのHSコード220300(ビール)輸出は金額で$7,165,227(輸出統計はFOB価格、以下略)、重量で4,533,214㎏です(上図11と12)。
日本の貿易統計データで2024暦年のHSコード220300(ビール)の米国向け輸出を調べると、金額で¥1,084,574、重量で4,533,214㎏です(上図14)。
つまり、UN Comtradeデータと日本の貿易統計データは、同期間の重量データ数値が一致し、かつ金額も為替レート¥151(2024暦年の円ドル平均レート¥151)であることから、データの精度、信ぴょう性に問題のないことが確認できました。
5.UN Comtradeおよび日本の貿易統計データの弱点
弱点を指摘します。この統計データは、精度がHSコード6桁の範囲にとどまるということです。つまり同一HSコードでくくられる品目が全て含まれるということです。ビールならば麦芽とホップを原材料とするもの、さらにコーンスターチが混じるもの、などが含まれるということです。各国が独自に定めるHSコード7桁目以降の品目までの精度は期待できない、ということです。
しかし大まかな精度であっても、貿易データをある程度の精度で、しかも無料で入手できる利便性を無視することはありません。弱点を理解したうえでデータ検索を有効に行いましょう。
さて、冒頭の問い「2024年の韓国から米国へのビール輸出実績」ですが、UN ComtradeのJapanのすぐ下にRep. of Koreaがあります。金額は$8,838,613、重量は5,721,948㎏で、金額では日本より25%程度多く輸出したことがわかります。㎏当たり単価は日本が$1.58、韓国が$1.54なので、ほぼ同価格帯の商品が出荷されたことがわかります。統計データからわかることは多いですね。
まとめ
日本の貿易統計だけでなく世界各国の貿易統計を調べるにはUN Comtradeというツールを使います。20xx年のA国からB国へのCという品目の輸出実績は言うに及ばず、B国が世界各国からCという品目をどのくらい輸入しているか、などの金額と重量(数量や容量のこともあります)情報がわかります。うまく活用して販売増に役立てましょう。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングや研修サービスを、民間企業およびジェトロや大阪商工会議所などの公的支援機関向けに提供している。これら機関向けセミナー実績も多数有する。日本政策金融公庫「輸出ノート」や「輸出コラム」の執筆を担当する。
URL:https://sub.toro-llc.co.jp