海外ビジネス経験3年以内の方へ「意外にやわらかく」お役立ち情報を提供します。

みんなの海外取引ブログ

アメリカ グローバル

【米国FDAの査察が強化されます】米国向け食品輸出が厳しくなるのですか?

投稿日:

海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。 

202556日、米国FDAが事前通知なしで外国施設への検査を拡大させる方針を発表しました。FDAって米国向け食品輸出に必要な認証規格ですよね? 事前通知なしの検査とはどういうことでしょう? 

 

FDAは認証や規格でなく、機関の名称 

出典:合同会社トロ資料 

 

1.FDAは米国食品医薬品局のこと 

FDA認証や規格というものが存在するという認識は誤りです。FDAとはU.S. Food and Drug Administrationという米国政府の1機関で、食品、医薬品、医療機器、レーザー等を放射する機器、化粧品、ワクチン、等の安全性に責任を負っています。以下では皆さんの関心の高い食品について解説します。 

米国でこうした物品を販売する事業者は、当該品目の施設登録が義務付けられ、FDAからの査察対象となります。20255月の発表前は、査察に行きますという事前通知がありました。 

米国食品医薬品局(FDA 

https://www.fda.gov/ 

 

 2.なぜ査察を厳格化するのか 

米国民の健康面の安全を守るFDAとしては、安全に製造された食品が供給されているかに常日頃から目を光らせています。例えば、乳児用ミルク、調味料、菓子、農産物、水産物、ペットフード、等ほとんどの食品が対象になります。 

対象となる食品の例(次のP11に記載あり) 

ジェトロ 米国食品医薬品局(FDA)による日本の食品供給施設査察ガイドブック(第3版) 20203月版 

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2020/44ba137f83d8a0bf/FDA_guide_rev.pdf 

 

供給されている食品が安全かどうかを判断するためにFDAは食品供給施設に立ち入り、査察を実行します。米国内の登録施設には以前から事前通知無しに査察を行ってきましたが、外国の施設には事前通知付きで査察を行ってきました。事前通知があると、付け焼刃で準備をして査察期間だけ表面的に整えることも可能でした。つまり米国内と外国の登録施設の査察がダブルスタンダードだったわけです。 

FDAは、中国とインドにある登録施設に対しては「抜き打ち査察」を試験的に行ってきました。 

20255月の発表は、ダブルスタンダードの終わりを意味しています。 

  

3.ではどうすればよい? 

日本で製造した食品を米国に輸出している企業は対応しなければなりません。 

対応する内容は、製品の品質管理の徹底ということに尽きますが、再度社内体制を見直すことが必要です。 

  • いつ査察が来ても良いような体制を構築する 
  • 工程管理表や作業マニュアル等の英語化、現場責任者の英語力強化を行う 

 

 4.FDA査察の厳しさ 

FDAの登録施設に求められる管理体制レベルは、日本の食品衛生法より厳しいと認識しましょう。食品衛生法の2020年改訂版に抜かりなく対応できる体制をまず構築し、そのうえでFDAに備えましょう。 

食品衛生法 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197196.html  

 

5.日本への輸入ではどうする? 

日本の食品衛生法も輸入食品に関して厳しい安全衛生基準を設けています。例えば、乳および乳製品に関して輸出元国政府が発行する衛生証明書が無ければ日本国内での販売ができない、という法令もあります。 

日本の食品衛生法では当局は海外への査察こそ行いませんが、取引相手が食品の安全と衛生についてしっかりした管理を行っている(HACCP対応等)ことを求めています。日本国内で輸入食品を販売する事業者は、輸入相手の品質管理体制はどうなのか、を取引開始前に調査することが大切です。取引相手に関しての調査は信用状況も含め、定期的におこなうことをお勧めします。 

食品衛生法 乳及び乳製品の衛生証明書について 

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yunyu_kanshi/index_00014.html  

 

まとめ 

米国食品医薬品局、英語略称FDAは、20255月初頭から海外の登録施設への査察を事前通知無しに行うことを決定、発表しました。つまり、FDAに施設登録する全ての事業者はFDA抜き打ち査察に備えた品質管理を日々行うことが求められます。日本の食品衛生法は海外業者への査察は行っていませんが、海外食品業者(メーカー)に厳しい衛生管理を求めています。海外の取引相手の品質管理情報を調べ、更新を続けることで、事業の安定化が実現できるということです。 

 

 

【プロフィール】 

合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし) 

 大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングや研修サービスを、民間企業およびジェトロや大阪商工会議所などの公的支援機関向けに提供している。これら機関向けセミナー実績も多数有する。 

メール:info@toro-llc.co.jp 

URL:https://sub.toro-llc.co.jp  

-アメリカ, グローバル
-, ,

Copyright© みんなの海外取引ブログ , 2025 All Rights Reserved.