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【越境ECで製品安全を意識する】事故防止に向け、法令整備の動き

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海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。

世界中で越境EC販売が大きく伸びる中、製品安全への関心が高まっています。越境ECで外国の売り手から購入した製品に火災などの重大事故が発生した場合、あるいは製品リコールが必要となった場合の法令整備が遅れているのが現状です。

この分野で先を行くEUの法令整備の状況から、今後の日本での動きを考えてみましょう。

 

販売する前から製品安全を意識する

 

 

出典:合同会社トロ資料

  1. この分野で先を進むEUでは、一般製品安全規則(GPSD:General Product Safety Regulation)が2023年5月23日に公布、6月12日に施行されました。本格適用は施行から18か月後の2024年12月13日の予定です。
    EU向けに越境EC販売される日本を含む海外製品は、ネットの販売サイトに責任者の名前や連絡先(住所、メールアドレス)を表示することが義務付けられます。この場合の責任者とは、EUでの輸入者、承認された代理人またはフルフィルメント・サービス・プロバイダー(FSP)、を指します。
    *FSPは倉庫保管、梱包、配送など一連の物流業務サービスを提供する業者のことです。物流業者やECモール運営者がこのようなサービスを提供しています。

    事故を知った場合、責任者は遅滞なく当局に報告する義務が課せられます。リコールの場合、修理、交換、返金のうち少なくとも2つの選択肢を迅速に提供することが求められます。
    当該製品をサイトに掲載したオンラインマーケットプレイス提供者(越境ECネットモール事業者)にも、危険製品をウェブサイトから削除する、などの義務が課せられます。

  1. 日本国内においては前記1.のような、越境ECで購入した製品の事故から国内消費者を保護する法令の整備がなされていません。海外販売者が消費者に直接販売した場合に発生した重大事故やリコール対応も、2023年8月現在、不透明な状況です。
  1. 日本でも越境EC販売にかかる製品安全の法令化は迅速に進められると見込まれます。その場合、
    1)越境供給された製品(海外からの直接販売)の事故報告への対応、
    2)越境供給者(海外販売者)によるリコールへの対応、
    3)製品安全4法(電安法、ガス事法、液石法、消安法)違反への対応、
    4)越境ECネットモール事業者への義務と対応協力要請事項、
    が議論の対象になると思われます。
    経済産業省関連サイト https://www.meti.go.jp/shingikai/safety_security/consumer_products/pdf/20230630_2.pdf
  1. 事故が発生した場合、製品によっては大きな損害を消費者に与える恐れがあります。その結果自社やステークホルダーに好ましくない影響を与える可能性も考えられます。対策として、海外PL保険(製造物賠償責任保険)をかけること、リコール保険の加入も検討すること、を検討しましょう。
    海外ビジネスは取引相手の顔が見えにくいため、国内ビジネスよりリスクが大きいことがあります。PL保険のみならず、取引相手が取引に値するかの信用調査も定期的に(半年ごとを推奨)行いたいものです。

 

まとめ

越境ECで外国の消費者向けに直接販売した製品が不幸にも事故を起こしてしまった場合、自社や越境ECネットモール事業者は直ちに行動を起こさなければなりません。既にEUでは法令が整備され、2024年12月以降遵守することが求められます。外国から日本国内向けの越境EC販売においても法令化の動きが進んでいます。

 

【プロフィール】

合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)

大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングや研修サービスを、民間企業およびジェトロや中小機構などの公的支援機関向けに提供している。これら機関向けセミナー実績も多数有する。

メール:info@toro-llc.co.jp

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