海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
海外に限らず、取引は集金して仕事完了です。「カネ」をどのように回収するか、回収リスクを低減する方法は、ということを考えて実務を行うことが非常に大切です。
「カネ」の流れと留意点を説明します。
前もってお金を受け取りたい売主(輸出者)、お金は後で支払いたい買主(輸入者)
出典:合同会社トロ資料
- 決済時期は、船積前、船積とほぼ同時期、船積後、いずれも当事者同士の話し合いで決めることができます。金利の高い外貨で後払い決済の場合は、全額入金するまでの期間の金利を価格に含める必要があります。見積もり時にきちんと計算します。
- 支払い(回収)は、荷為替手形(Bill of exchange:B/E、あるいはBank draftなどと言います)を利用する方法、電信送金(Telegraphic Transfer Remittance:TTR)する方法、送金決済代行サービスを利用する方法、などがあります。売主と買主の話し合いで決めます。
- 決済業務前に、売主は買主の支払い能力を調べます。これを信用調査と言います。決済を確実に行うために輸出取引信用保険を利用することもあります。
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- 売主は、有価証券であるB/Lを含む船積書類および荷為替手形を準備し、これらと引き換えに代金回収することができます。買主の取引銀行が支払いを保証する信用状決済(Letter of Credit:L/C)は、決済リスクを最小化するという点で売主・買主双方にとって公平なため、過去からよく利用されてきました。つまり、有価証券であるB/Lを含んだ船積書類一式を担保にするのが信用状決済です。
- 信用状には船積書類の作成について細かく指示が記載してあります。Invoiceなどの船積書類をその記載通りに作成します。記載内容が信用状の指示と違っていると、L/Cディスクレ(ディスクレパンシーの略)と言い、銀行から支払いを拒否されることがあります。よって、船積書類の作成には細心の注意をもってあたります。
- 航空便の場合は、海上輸送でのB/Lに相当するAWB(航空運送状あるいは航空貨物運送状)が有価証券でなく貨物は必ず荷受人(コンサイニー、通常は買主)に渡されること、航空便は数日以内に買主国に到着するので銀行経由だと書類が間に合わないことから、L/C決済が利用されることはほとんどありません。
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7.信用状のない荷為替手形による決済は、買主の信用度が十分確認できた場合に限るようにします。貨物を先に引き取り、代金回収は後日となるので、買主の信用度を必ず、かつ定期的に行うことが求められます。
買主の銀行が買主に船積書類一式を提示したときに買主が銀行に支払う方法を、D/P at sight、書類一式を提示してからX日後に買主が銀行に支払う方法をD/A X days after sightと言います。買主の銀行が代金回収した後に、売主の銀行経由で売主に代金が支払われます。
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8. TTRは荷為替手形を利用せず、売主と買主の間で直接船積書類をやり取りします。書類が銀行経由で送付されないため、送金での後払いは回収リスクが非常に高くなります。送金決済を利用する場合、売主はなるべく前払いあるいは出荷前に回収することを心がけます。全額前金回収であっても、買主についての信用調査を定期的に行うようにします。
まとめ
「カネ」では、お金を確実に全額回収することを最優先にします。事前に信用調査を行い、回収リスクに備えます。信用調査は一度だけでなく定期的に行うことをお勧めします。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングや研修サービスを、民間企業およびジェトロや中小機構などの公的支援機関向けに提供している。これら機関向けセミナー実績も多数有する。
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