海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
2023年が始まりました。貴社を取り巻く今後1年の世界経済動向を予測することは不可能ですが、明らかな事柄もあります。前回の2022年を振り返るブログで、2023年1月1日からRCEPで使われるHSコードの年度が2012年版から2022年に変更されることをチラリと紹介しましたが、他のFTA/EPAについて情報更新をしていますか?実は2023年初頭から幾つか変更があります。知らずに今まで通りの仕事をしているとトラブルになるかもしれません。
2023からこう変わるFTA
*国名は国別コードドメインで示しています(CF=スイス、MY=マレーシア、など)
出典:合同会社トロ資料
1. 2023年1月1日からRCEPのHS年度が2012年版から2022年版に変更となる
RCEP協定で使われるHSコードの年度は2012年版ですが、2023年1月1日の輸入分から2022年版を使うことになります。
輸出企業においては日本商工会議所への原産地証明書の判定や発給申請を2022年版のHSコードで行うよう、当該品目や原材料を再確認しましょう。輸入企業においては、輸出元から送られてくる原産地証明書が2022年版HSコードで発給されているか輸出元に確認しましょう。
HSコードの2012年版と2022年版の番号がどのように変わっているかは、次のURLから確認できます。
HSコードのバージョン変換(HS2022からHS2017への変換、HS2017からHS2012への変換、で調べてください)
https://www.customs.go.jp/searchro/jrosv001.jsp
2. 2023年1月2日からインドネシアとの貿易でRCEP協定が使える
インドネシアとの貿易では、日本インドネシア、日本アセアンの2種類のFTA協定を使うことができましたが、今年の1月2日からRCEP協定がこれに加わりました。インドネシアとの貿易で計3つのFTA協定を使うことができるということです。3つの協定の中から、関税率、原産地規則の容易さをそれぞれ調べ、自社にとって最もよい条件の協定を選ぶようにしましょう。
3. 2023年2月21日からチリとの貿易でTPP11協定が使える
チリとの貿易では、日本チリのFTA協定を使うことができますが、今年の2月21日からはTPP11(正式にはCPTPP)協定がこれに加わります。チリとの貿易で計2つのFTA協定を使うことができるということです。2つの協定の中から、関税率、原産地規則の容易さをそれぞれ調べ、自社にとって最もよい条件の協定を選ぶようにしましょう。税率は既にTPP11を発効している締約国と同じ税率が適用されます。
2023年1月19日付け税関広報 https://www.customs.go.jp/roo/text/tpp_chile.html
尚、TPP11は原則として自己証明による原産地証明書制度を採用しているので、TPP11を利用したチリとの貿易では第三者証明(日本商工会議所による原産地証明書発給)は使えません。
4. 2023年3月1日から日ASEAN協定のHSコードがHS2002年版からHS2017年版に変更となる
1項のRCEPのように、日ASEAN協定で使用されるHSコードが2002年版から2017年版になります。2002年版と2017年版では同じ品目でもHSコードが異なるものが多いので、あらかじめ品目と原材料HSコードの変換内容を調べておきましょう。調べるサイトはこちらです。https://www.customs.go.jp/searchro/jrosv001.jsp
まとめ
2023年の3月までに、適用されるHSコードの年度が変わるFTA協定(RCEP、日ASEAN)、新たに使えるFTA協定が加わる国(インドネシアとのRCEP、チリとのTPP11)があります。品目によっては原産地証明の各種作業を変更する必要があるので、HSコードの内容、原産地規則、関税率を確認しておきましょう。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングサービスを、民間企業およびジェトロや中小機構などの公的支援機関向けに提供している。これら機関向けセミナー実績も多数有する。
メール:info@toro-llc.co.jp
URL: https://sub.toro-llc.co.jp/