海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
前回は、輸入関税を決める基となるHSコードの上6桁が世界共通ゆえ、日本の実行関税率表(税関ウェブサイト)から探りを入れられるというお話をしました。
今回は関税削減割合(%)がどれくらいになるのか、EUから日本へのハンドバッグの輸入例をあげ、調べ方を具体的にご紹介します。
*尚、最終的にHSコードや関税率を決定するのは「輸入国の税関」です。
日本に輸入する場合は日本税関、日本から輸出する場合は輸出先国の税関に(現地パートナーを通じて)事前教示制度(Advance Rulingと言います)などを利用して最終確認してください。
日本税関・事前表示制度(関税評価、原産地規則は次のURL 2項-3項を参照して下さい):http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/index.htm#h
▼目次
日本に輸入する場合の、通常の関税とEPA/FTA関税率を比較する
日本への輸入例(欧州製ハンドバックを日本に輸入する)
憧れの欧州ブランドハンドバッグを輸入する場合、日欧EPA/FTA関税を使うとどのくらい関税が安くなるのでしょうか。日本の税関サイトを覗いてみましょう。
前回の最後にご紹介した実行関税率表を調べます。日欧EPA/FTAなのでHSコードは2017年版ですね。税関サイトでは2019年2月1日版を見ましょう。
http://www.customs.go.jp/tariff/index.htm
税率をクリックすると、いろいろな品目が登場します。ハンドバッグゆえ革製品が出てくるまで下にスクロールします。第42類というグループに含まれていることが分かります。そこの税率をクリックすると下のような画面が出てきます。
ハンドバッグにも様々な種類があることが分かります。また、関税率・基本とか、関税率・WTO協定とかありますね。どちらでしょうか?(たいていはWTO、別名MFNという税率を選びます。
日本の輸入関税は、ハンドバッグの表面が革製かその他かにもよりますが、14~16%のようです。
では、日欧EPA/FTAを利用したらこれが何%の関税率になるでしょうか?表を右にスクロールしてみます。尚、お気づきかもしれませんが、メキシコ・マレーシア・チリ・タイ産ハンドバックはEPA/FTAを使うと無税で日本に輸入できることがわかります。
次の表によると、日欧EPA/FTAを使うと欧州産ハンドバックが14%→12.7%(1.3%削減)、あるいは16%→14.5%(1.5%削減)で輸入できることがわかります。単価10万円のハンドバックが1,300円から1,500円安く輸入できる、ということです。これならば(数量次第ですが)日欧EPA/FTAを利用して日本の輸入関税を削減することが経済的と言えます。
日本が複数EPA/FTAを結ぶ国や地域との関税率は要注意
前表の欧州連合EUの左隣にTPP11の関税率も記載してあります。日欧EPA/FTAと同じ税率であることが分かります。
更にその左横にはTPP11の加盟国でもある豪州やベトナムの税率も掲載されています(緑の丸です)。
よく見ると豪州やベトナムのEPA/FTA税率の方がTPP11より低いですね。ということは、ベトナム産ハンドバックを輸入する時にはTPP11ではなく日本ベトナムEPA/FTAを利用して輸入する方が日本の関税率を削減できる、ということになります(豪州も同様)。ベトナムと日本とは日ASEANのEPA/FTAも結んでいるので、合計3つのEPA/FTAを利用することができます。
実は日ASEANでのハンドバッグ(420221)輸入関税は「無税」ゆえ、ベトナム産ハンドバックの日本への輸入ならば、日ASEANのEPA/FTAを利用するのが最善で、日ベトナム(この表では1%~1.2%)やTPP11(この表では12.7%~14.5%)のEPA/FTA利用は考えなくてよい、ということになります。もちろん全ての品目がこのケースと同じということはなく、具体的な品目ごと、あるいは年度ごとに適用される関税率は変わりますので、細かい確認が不可欠です。
日本が締結しているEPA/FATで輸入関税が毎年どのように削減されるのか、をまとめたものが税関の次のURLに掲載されています。
http://www.customs.go.jp/kyotsu/kokusai/gaiyou/chui.htm
日ASEANでは? 日ベトナムでは? TPP11では? ということを知るにはこれらのステージング表をそれぞれ閲覧して関税率を比較することが効率的です。尚、この表の品目はHSコードで表記されているので、事前に当該貨物のHSコードを手元においておきましょう。
まとめ
輸入国での関税の絞り込みは、日本への輸入の場合は日本の税関ウェブサイト実行関税率表から、該当する年度のHSコードに基づき調べます。欧州製ハンドバックの通常輸入関税と日欧EPA/FTAを利用した輸入関税を例にとって調べ方を紹介しました。
また、日本が複数EPA/FTA協定を結んでいる相手国や地域からの場合は、最も低関税となるEPA/FTA協定を利用することが関税率削減につながります。
次回は日本からの輸出におけるHSコードの絞り込み、関税率の調べ方について説明します。
▼バックナンバー
第1回 【TPP11・日欧EPA/FTA】今までのEPA/FTAとここが違う!
第2回 【TPP11・日欧EPA/FTA】重要な第一歩「HSコード」
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングサービスを、ジェトロや中小機構などの公的支援機関および民間企業向けに提供している。
URL: https://sub.toro-llc.co.jp/