海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
いい人材を採用したい。当然のことです。しかし採用時の履歴書(C.V.=スィーヴィーとかResume=レジュメと言います)に写真とか要求していませんか?国によっては写真はおろか、年齢、性別、住所、宗教といった情報がタブーのところがあります。
今回は、採用から育成に至る過程で気を付けることについて説明します。
「知ってはいけないこと」「第三者に知らせてはいけないこと」を労使共に意識する
採用
- 採用時の履歴書や面談ではあくまで業務に関した情報を得るようにします。仕事に対する姿勢、どのようなポテンシャルがありどのような実績をあげてきたのか、困難な事項をどのように解決してきたか、というようなことを知り、採用の判断としましょう。
- 冒頭であげた個人的事項は、家族構成も含め差別的と判断される国があります。現地の労働関連法規をよく調べた上で情報入手することが求められます。
これをしないと → 差別的ブラック企業ということでSNSの話題に、場合によっては訴訟の対象になるかもしれません。
入社
- 晴れてスタッフが入社する時には、雇用契約書を用意します。ここには「守秘義務」と「競業避止義務」条項を忘れずに記載します。守秘義務はその名の通り就労することで知りえた秘密を守秘するものです。また、競業避止義務とは、退職後x年間は競合企業に就労しない、あるいは競合相手となる事業を開始しない、というものです。
- 横領(着服)、贈収賄などの不正行為を禁じる条項も用意します。国によっては贈収賄が商習慣のようになっているところもあるかもしれませんが、この規定に違反した場合には解雇もあり得る毅然とした条件としたいものです。
- 入社時に厳しい規定を示すことで、その後の不正や秘密漏洩を防ぐことが可能になります。コンプライアンスの観点からも契約書の条項はしっかり作成しましょう。
- 契約書にこれら条項を明記する際には、その国の関連法規を調べ法律専門家の意見も聞いた上で反映して下さい。記載に用いる言語(英語など)も確認します。国によっては就業規則という形で管理することを勧められるかもしれません。
これをしないと → 図面などの秘密情報を持ち出され、競合他社に売られてしまうかもしれません。
育成・教育
- 採用された人にどのような業務を任せるのか、Job Description(職務記述書)に基づき説明します。
- 自社及び製品やサービスの特徴を学んでもらうことは当然ですが、成果をあげる過程でどのようなスキルアップを図ってもらいたいのか、面談機会を多く持つようにしたいものです。
- もちろん、出向者自身の実力がないとスタッフの育成はできません。実力のない上司にスタッフがついて行かないのは日本も海外も変わりありません。海外の場合は見極めが早く、自身のキャリアアップにつながらないダメ上司あるいはダメ会社からは去る、という行動が顕著です。自身の実力も試されている真剣勝負の場がスタッフの育成、という認識で業務にあたりましょう。
- 退職を前提としてスタッフの育成にあたるというのも奇妙ですが、できる人材とは退職後も顧客や協力業者としてよい関係を築けるよう、指導・育成しましょう。
これをしないと → 3年間鍛え上げたところで辞められてしまうかもしれません。
次回は人材マネジメントの各要素のうち、動機付けや評価関連についてお話します。
まとめ
スタッフの採用時、日本のように写真を貼ったり年齢を記載する履歴書は原則として不可です。入社時は、守秘義務、競業避止義務、不正行為の防止、といった条項を含んだ雇用契約書を結ぶようにします。育成に際しては職務記述書をきちんと作成し、それに基づいて指導・育成してゆきます。こちらの実力が足りないと見切られてしまうので、育成の場は互いに真剣勝負の場とも言えます。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングサービスを、ジェトロや中小機構などの公的支援機関および民間企業向けに提供している。
URL: https://sub.toro-llc.co.jp/