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チャイナリスク(連載第6回)中国ならではの特徴と環境問題リスク

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これまで6回のシリーズにおいて述べてきたように、チャイナリスクを読み解くことの難しい理由は、
①中国の政治経済システムが分かりづらいこと
②正確な情報がつかみづらいこと
③中国経済が世界各国と複雑に繋がっていることが挙げられるでしょう。
だからと言って、中国と貿易・投資を行う上でリスクを取ることなくリターンを求めることはできません。
今回は全6回の補足として、チャイナリスクならではの特徴と、中国を語る上で避けられない「環境問題」を紹介します。

 

▼目次

なぜチャイナリスクは複雑なのか

「北京で蝶が羽ばたくとニューヨークで嵐が起きる」とは、もともと気象学で使われていたフレーズです。
小さな事象が様々な波及経路を辿り予想外に遠いところに伝播し、想定外の影響をもたらすことを教えています。

このフレーズは今や、複雑系経済学を代表する表現となりました。

(用語説明)「複雑系経済学」従来の経済学は、ニュートン物理学を出発点にしていました。すなわち経済主体である人間「合理的な行動をとる者」として理解し、その経済活動を論理的に説明しようとしました。一方、物理・数学など自然科学の分野で、「同じ前提でも異なる結果がある」ことが立証され、これらは「複雑系」と呼ばれるようになりました。

この「複雑系」理論を応用した経済学を「複雑系経済学」と呼びます。
人間は「非合理的な行動をとる者」であり、初期の微小な誤差が最終的に予想外の結果をもたらすものである、と経済活動を説明しようとするものです。
現在の世界経済や金融市場では、デリバティブなど金融技術の進歩によりシステムが複雑化しています。

その結果色々な要素が絡み合い、リスクの所在や影響が分かりづらくなっているのです。

またリスクが複雑化する現代において、チャイナリスクをさらに難しくしているのは、中国が導入している「社会主義市場経済」という分かりにくいシステムです。

このシステムは共産党一党独裁下において自由な経済社会を実現するという他に例のない試みです。

それゆえに、チャイナリスクを理解する上で最も難しい点だと言ってもよいでしょう。

チャイナリスクの特徴は情報の不透明性

チャイナリスクが世界の様々なリスクの中で最も読み解きづらい理由は、連載第1回でも触れた「情報の不透明性」にあります。どの国においてもカントリーリスクを検討する場合には、情報を分析することから作業を始めなければなりません。

そのためには公式の統計データが信頼できるものであることが大前提となります。しかし中国の場合、政府などが発表するデータに信頼感が欠けると言われています。

背景には、政治も経済も全て一党独裁下で運営されている構造があります。入手できる情報が透明性に欠ける点を十分理解し、中国ビジネスに取り組む必要があるでしょう。

 

「環境」は中国を取り巻く最大のリスク

これまで中国を取り巻くリスク(=チャイナリスク)について様々な観点から考えてきました。
最後に、環境リスクに触れておきたいと思います。

環境問題は人の生命を脅かし、また将来の中国の経済活動を制限することになりかねない最大のチャイナリスクです。環境問題と一口に言っても、

・大気汚染(石炭の利用による煤煙、工場の環境対策の遅れ)
・水質汚染(都市部の生活汚染水、廃水を垂れ流す企業)
・土壌汚染(産業廃棄物や農業廃棄物)

・生態系破壊(巨大ダム建設による河川へのダメージ等)

などが挙げられます。特に西部大開発により内陸部の自然が破壊され、さらに工業化、自動車文明化により大気や水質汚染が進んでいます。

今後、政府は環境改善に向けて本腰を入れるとしていますが、半面では経済成長にブレーキがかかる可能性は否定できません。その点でも、環境リスクによる中国経済への影響は甚大です。

 

備えあれば憂いなし

これまで6回にわたり、中国に焦点をあて様々なリスクについて考えてきました。

貿易・投資など国際ビジネスを行うに当たり、リスク管理なくしてリターンを求めることができないことをお分かり頂けたと思います。

もちろんリスクばかり考えていては一歩も前に進めなくなりますが、「備えあれば憂いなし」の諺もまた真実かと思われます。

「ローリスク、ローリターン」「ミドルリスク、ミドルリターン」「ハイリスク、ハイリターン」。
それぞれの局面でリスクとリターンを調整することこそ肝要であることを、今回の連載の結論にしたいと思います。
risk_profile ●コラム筆者プロフィール●

名前:テムジン
リスクマネジメント界のチンギス・ハンです。
一言:迷える子羊たちに、世界各国のカントリーリスクを
分かりやすく説明します。

 

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