アフガニスタン情勢が与えるインドへの影響
インドで日本企業の進出支援を行っている公認会計士の野瀬大樹です。
以前連日話題となりましたアフガニスタン情勢ですが、インドにとってアフガニスタンは日本の立場よりもずっと近いということもあり、ニュースの報道は多めでした。またインドは比較的多数のアフガニスタン難民を受け入れてきた歴史もありその点からも注目を浴びているようです。
基本的に今回のタリバンによるカブール占領そしてその原因となった米軍の撤退はインドではネガティブなニュースとして取り上げられています。
理由の一つはテロへの影響。
イスラム教勢力の中でも比較的過激と言われるタリバンがアフガニスタンの実権を握ることで、ここ数年は収まっているイスラム過激派によるテロがまた活性化するのではという懸念、そしておそらくまた大量に発生するであろうアフガニスタン難民の中にテロリストが紛れ込んでいるのではないかという懸念です。
日本ではあまりイメージがないかもしれませんが、インドはパキスタンを除くイスラム教国家(イラン、ウズベキスタン、カタールなど)とは比較的良好な関係を築いてきた実績があり、それはアフガニスタンに対しても同じです。
現在国連安全保障理事会の非常任理事国であるインドは国連を通してアフガニスタンの安定化を図りこれらのリスクを抑える動きをとるでしょう。
もう一つが経済面です。おそらくこちらのほうが実際の影響は大きいでしょう。
両国は地理的に近いこともあって、インドとアフガニスタンの間では様々な経済活動が活発に行われています。主要な品目は農産品ですが、
■インド→アフガニスタン
レーズン、クルミ、アーモンド、イチジク、ピスタチオ、アプリコット、スイカ
■アフガニスタン→インド
紅茶、コーヒー、綿
になります。
両国の間にはパキスタンがあるということもあり、これらの貿易は空路で行われているのですが、アフガニスタン情勢の緊迫化により現在その行き来が止まっている状況です。
インドはITや最近は製造業なども成長しているとはいえ、今でもGDPのうち農産品の超える割合は1割を超える農業大国であり、綿や紅茶の輸出が止まるという事態は死活問題です。また、レーズンやアーモンドもインドでは贈答品の定番であり、これらの輸入が止まることでその価格が高騰してしまうと、11月のディワリのお祭り需要が控えていることを考えると経済に与える影響は無視できないものになるでしょう。
いまだに流動的な状況が続くアフガニスタン情勢ですが、インドは日本以上に、その状況を注視しています。
まとめ
インドでもアフガニスタン情勢は注目されている。
理由1:インド国内におけるテロ活動への影響や多くの難民の流入
理由2:農作物の輸出入相手であるため、経済面への影響が懸念される
【プロフィール】
野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士
大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。
事務所HP:http://in.nacglobal.net/