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【海外ビジネスパーソン必見】「アニュアルレポート(Annual report)」による海外企業の分析方法

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▼目次

海外企業の情報把握に役立つ「アニュアルレポート」

アニュアルレポートとは?

海外企業とのビジネスを検討する際に、どのような情報収集を行っていますか?
ホームページの会社情報をチェックしたり、直接相手から会社のパンフレットを入手したり、業界団体から資料をもらったり、信用調査会社(Credit Agency)から調査レポートを入手されたりしているのではないでしょうか。もう一つ、コストをかけずに情報収集を行う方法として、「アニュアルレポート」の活用が有効です。

「アニュアルレポート(年次報告書)」とは、企業が、株主や取引先といった利害関係者(ステークホルダー)への情報開示の一環として作成する資料で、実は法的に作成する義務はありません。一方、上場企業が、各国の法律に基づき提出する義務があるのが「Securities report(有価証券報告書)」です。

記載内容にさまざまな制約がある「有価証券報告書」に比べると、「アニュアルレポート」は、比較的読み手目線の分かりやすさが意識されていることが多く、ざっと大づかみで理解しやすい点がメリットです。

上場企業のIRサイトでは、「Securities report」のことを「アニュアルレポート」と記載している場合もありますが、それぞれ目的が異なることを知っておきましょう。

アニュアルレポートの入手方法

アニュアルレポートを入手する一番簡単な方法は、Google等の検索エンジンで、「(社名)+annual report+(年度)」と検索する方法です。

<Amazon社のアニュアルレポートを入手する場合>

検索エンジンで、「amazon annual report 2016」と検索します。年度も入力した方が誤って古い情報を取得してしまうことがなく便利です。

アニュアルレポートは年次報告書のため、決算月の4ヶ月から半年後までに開示されることが多いようです。

見たい年次をクリックすると、PDFまたはHTML版の「Annual Report」を閲覧することが可能です。

大企業であれば、IR(Investors Relations)サイトから入手が可能ですし、上場企業であれば、各国の証券取引所サイト等から情報を取得することも可能です。

決算書分析を始める前にまずチェックしたい「Auditor’s report(監査報告書)」の見方

アニュアルレポートを入手し、早速中身を見てみると、まずその圧倒的な分量に驚くのではないでしょうか。一概には言えませんが、上場企業ですと100~200ページあるのが一般的ですので、一体どこを読めばよいか途方にくれてしまうかもしれません。もちろん時間と体力に余裕があれば、隅から隅までチェックするのが望ましいのですが、忙しいビジネスパーソンが、そこまで時間を取るのは難しいと思います。

アニュアルレポートには、経営者のメッセージや事業戦略・リスクに関する記載、セグメント毎の業況など企業の経営分析を行う上で重要な情報が盛りだくさんです。その中でも最も重要で、且つ関心が高い情報はその企業の「決算情報」ではないでしょうか。結局、その会社がどれだけ成長していて、利益をあげているのか(または損失を計上しているのか)は全ての利害関係者共通の関心事だからです。

そうすると、ついつい「アニュアルレポート」から「Profit and Loss Statements(損益計算書)」や「Balance Sheet(貸借対照表)」を探し出し、決算書の分析を進めたくなってしまいますが、ちょっと待ってください。
そのような海外ビジネスパーソンに、まず真っ先にチェックして頂きたいのが、「Auditor’s report(監査報告書)」なのです。

Auditor’s Report(監査報告書)とは?

「Auditor’s report(監査報告書)」とは、独立監査人である監査法人または公認会計士が、その企業の決算書の適否について意見を表明し、決算書の信頼性について“お墨付き”を与えるものです。つまり、会計の専門家である監査人の意見を確認することにより、そもそも、その企業の決算書のクオリティはどの程度かを計ることが可能です。

Auditor’s Report(監査報告書)の確認ポイント

Auditor’s Report(監査報告書)の探し方

まずは、アニュアルレポートからAuditor’s reportを探しましょう。1ページ目から探していくのは非効率なので、ちょっとした裏技がございます。PDFまたはHTMLのファイル内検索機能(ショートカット「Ctrlキー+F」)を使い、「in our opinion」と入力してみてください。恐らく監査報告書の記載部分に直接飛ぶことができるはずです。
これは、なぜかというと、監査報告書は定型のフォーマットであるためです。具体的には、下記5~6つのパラグラフに分かれています。

  • 監査の対象
  • 財務諸表に対する経営者の責任
  • 監査人の責任
  • 監査意見
  • 強調事項
  • その他の事項

そして、一番肝心の「監査意見」についての書き出しは、「In our opinion」で始めるのが一般的です。

もしファイル内検索が使えない場合、通常は決算書の直前に記載がある場合が多いので、その辺りを探すと比較的容易に見つけられると思います。

監査意見を確認しよう!

監査意見は以下4つの区分に分類できます。通常は、1.のUnqualified opinionが付されますが、2.~4.の記載がある場合には要注意です。

  1. 無限定適正意見(Unqualified opinion)
  2. 限定付適正意見(Qualified opinion)
  3. 不適正意見(Adverse opinion)
  4. 意見不表明(Disclaimer)

最近の電機大手の事案でも注目されている監査意見ですが、特に上場企業で、「不適正意見 (Adverse opinion)」や「意見不表明(Disclaimer)」の場合には、上場廃止基準に抵触する恐れがありますので、内容の精査が必要です。

まとめ

アニュアルレポート(Annual Report)を活用し、海外企業の効率的な情報収集や分析を始めてみましょう。但し、決算書の分析(財務分析)を始める前には、独立監査人の「監査報告書(Audit Report)」をチェックすることで、そもそも重要な問題や企業の継続に何らかの疑義が生じている企業なのかを確認することができますので、まずは「監査報告書(Audit Report)」から読み込む習慣を付けてください。

次回は、実際の企業のAnnual Reportを題材に、さらに踏み込んで解説したいと思います。ご期待ください!

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