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第1章⑤海外企業信用調査レポートの見方(財務情報編)

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企業概要を確認し、「定性的」にその企業の状況を把握したら、次は財務情報を分析する事により、「定量的」にその企業の実態を把握していきます。

「業界では有名な会社だ」、「ずっと取引しているから大丈夫」、「何といっても大きな会社だから安心」という考えは、ビジネスを取り巻く環境がめまぐるしく変化する今の時代、通用しなくなっています。何が起こるか分からないからこそ、取れる情報をしっかりと取ることにより、少しでもリスクの芽を摘んだ取引ができるように心掛けていきましょう。

◇本記事で学ぶ内容◇

企業調査レポ-トの「財務情報」の重要なポイントをおさえることができる。

▼目次

チェックポイント① 売上と利益の推移

損益計算書(※1)を参照し、売上高(※2)や、当期純利益(※3)の推移(できれば三期分以上)を確認します。大幅な減収(売上が減ること)・減益(利益が減ること)が認められる場合や、赤字が継続している場合には、事業環境が大きく変化している可能性があるため注意が必要です。

※1:Income Statement、Profit and Loss Statement等と書かれています。

※2:Turn Over、Net Sales等と書かれています。

※3:Net Income After Tax(Loss)やProfit /(Loss) From Operations等と書かれています。

           企業調査レポート、財務情報ページのイメージ

無題の画像

チェックポイント② 黒字の源泉

本業で収益を上げているか(※4)を確認します。当期純利益がプラスであっても、営業利益がマイナスの場合〔営業外収益(※5)が最終利益黒字の源泉である場合〕、金融収益や親会社からのサポートで本業の赤字を補てんしている可能性があり、営業外収益の詳細についてよく確認する必要があります。

※4:Operating Income, Profit /(Loss) from Operations等と書かれています。

※5:Non-Operating income

チェックポイント③ 短期的な支払い能力

貸借対照表(※6)を参照し、現金または1年以内に現金化可能な流動資産(※7)を、1年以内に支払期限が到来する流動負債(※8)で割った値(※9)を確認します。一般的に、流動比率が150%未満の場合は、対象企業の短期的な支払能力に対する注意が必要です。

※6:Balance sheet

※7:Current Assets

※8:Current Liabilities

※9:Current Ratio

チェックポイント④ 現預金の増減

貸借対照表(B/S)を参照し、現預金(※10)の推移を確認します。現預金の急減や急増が見られる場合、その理由を把握することが重要です。要因としては、銀行からの借り入れ、借入金の返済、巨額の設備投資、財テク、回収遅延等々が考えられます。

※10:cash、cash&bank balances等と書かれています。

チェックポイント⑤ 借入金の増減

貸借対照表(B/S)を参照し、借入金(※11)の推移を確認します。現預金と同様、増減の理由を把握することが重要です。

※11:短期借入金→Short-term Liabilities(debt)

ご参考:長期借入金→Long-term Liabilities(debt)

チェックポイント⑥ 効率性分析

取引先の支払能力を分析する手法として、資産の運用効率を分析する効率性分析があります。以下に代表的なものをまとめましたので、是非ご活用下さい。

◆売上債権回転期間(Accounts Receivable Turnover Period)

売上債権(※12)÷(売上高÷365日)により算出し、売上債権の平均回収期間を検証します。業界標準・同業他社と比較して異常に長い場合は、不良債権の存在が推察されます。逆に、異常に短い場合は、現金欲しさからダンピング(不当廉売)を行っている可能性が考えられます。

※12:Trade Receivable

◆棚卸資産回転期間(Inventory Turnover Period)

棚卸資産(※13)÷〔売上原価(※14)÷365日〕により算出し、在庫がさばけるまでの平均期間を検証します。業界標準・同業他社と比較して異常に長い場合は、不良在庫を抱えている可能性があります。

※13:Inventory

※14:Cost of Sales

◆仕入債務回転期間(Accounts Payable Turnover Period)

仕入債務(※15)÷(売上原価÷365日)により算出し、仕入債務の平均支払期間を検証します。業界標準・同業他社と比較して、異常に長い場合は資金繰り悪化による支払状況悪化(支払遅延等)が想定されます。逆に異常に短い場合は、納入業者の与信姿勢が厳しくなっている事が推察されます。

※15:Accounts Payable

◆現金回収期間(Asset Conversion Cycle)

取引先の原材料購入から製造、販売、売上債権回収までにかかる期間のことです。通常の取引においては、この期間よりも長い期間の信用供与には応じないのが一般的です。

まとめ

今回は財務情報の読み解き方について学びました。財務情報は、深く読もうと思えばいくらでも深く読むことができますが、限られた時間の中ですべての項目を確認することは難しく、また効率的ではないことが多くあります。

全てを把握しようとせず、まずは今回のレッスン内容のようなポイントをおさえる所から始め、財務情報や財務分析に少しずつ慣れていきましょう。

☆次回は「信用調査レポートの信用情報の見方」について学んでいきます。

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