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モバイル端末の世界需要の伸びがベトナムにも波及
税関総局が発表したデータによると、2015年第1四半期の輸出入総額は750億米ドル以上に達しました。これは昨年同期比14.3%増になります。その内、輸出額が363億米ドルで8.8%増、輸入額が387億米ドルで20.1%増です。輸出額の増加は、FDI(海外直接投資)資本のある企業が中心となっていたためと考えられます。
輸出額が最も多かったのは「携帯電話、同部品」で、ベトナム全体の輸出を押し上げています。次いで第2位は「繊維、縫製品」でした。生産拠点として魅力的なベトナムは、近年多額のFDIが実施されたため、工業化の発展とともに輸出が拡大しています。
これまでベトナムの輸出品目のトップは縫製品でしたが、2013年からは携帯電話が第1位となっています。今回の輸出統計は、縫製品が落ち込んだというよりも、世界的にシェアがあるスマートフォンやタブレットといったモバイル端末の需要が伸びたことが原因と考えられます。つまり携帯電話と同部品の輸出シェアが押し上がったということです。特に、韓国大手企業のスマートフォンやタブレット端末の人気が牽引となったと言われています。携帯電話と同部品の輸出は、2010年から2013年の間に8.8倍まで拡大しました。
一方、縫製品については今後、ベトナムがTPP(環太平洋連携協定)に加盟すると、再び外資系企業からの投資が増えることが予想されます。
縫製品など軽工業から電機部品へ産業が高度化
2015年第1四半期の輸入総額は、前年同期比20.1%増の387億円でした。貿易支出の輸入額のトップは「機械、設備、部品」です。次いで第2位は「コンピューター、電子製品」、第3位は「携帯電話、同部品」になります。
上位は全て電子部品や電機関連のものが占めています。これは、外資の製造業がFDIを活性化しているためです。ただ、投資が増える一方で、ベトナムは電子部品を供給する裾野産業が未熟であるため、他国からの輸入に頼らざるを得ないという現状があります。
このように、ベトナムの貿易赤字への転落は同国の経済が減速している理由からではなく、国内産業の発展により繊維などの軽工業から電子、電機部品などへ高度化したためからです。ベトナム経済政策研究所は、2015年のGDP(国内総生産)の成長率を6.3%と予想しています。
対中国貿易赤字は構造的な問題との指摘も
国内総生産が成長していても、ベトナムにとって最大の貿易相手国である中国への輸出は鈍化しています。対中国貿易赤字は2015年1月から2月の間で51億7,000万米ドルに達しています。
これは中国の景気減速に加え、中国からの輸入品の中心が機械や工業用原料であるのに対して、主力となっている輸出品が水産品などの食品となっていることが原因です。また、輸出品の付加価値の低さが構造的な要因にもなっています。
対中国貿易赤字は2010年が116億米ドル、2011年は138億米ドル、2012年は167億米ドル、2013年は237億米ドルと拡大を続けており、2014年は290億米ドルを記録しました。
ベトナム国営銀行(中央銀行)は、2015年5月にベトナム通貨の「ドン」の対米ドル基準値を0.99%引き下げました。この引き下げによって輸出競争力は上がり、貿易赤字の歯止めを期待していましたが、構造的に輸入超過となっている中国相手には、どこまで好影響となるかは疑問視されています。
おわりに
ベトナムの貿易赤字の最大の原因は、主要な輸出品が縫製品などの軽工業品であり、電子部品などの割合が小さいためです。軽工業品は他国との価格競争が激しいため、安定しません。今後、軽工業品から電子部品へ転換できる体制を作ることが必要とされるでしょう。