長引く景気の低迷や、少子高齢化の進行によって日本経済の縮小が避けられない中、海外進出に自社の命運を託そうとする企業も少なくありません。
たしかに、若者が多く人口や所得の伸びが見込める東南アジア諸国や、既に多数の人口を抱える中国・インドなどは市場として非常に魅力的です。ただし、商習慣を含む文化がまるで異なる外国での事業展開には、当然ながら国内事業には無い数々の危険性が伴います。そのため、闇雲に利益ばかりに目を向けるのではなく、さまざまなリスクを考慮した上で対策を練ることが大切です。
今回は、海外進出にまつわるメリット、デメリットをお伝えします。
▼目次
海外進出のメリット
企業の海外進出に関しては、以下のようなメリットがあります。
【1】新たな市場開拓
衣服、クルマ、家電、モバイル端末など、日本には既にさまざまなモノが流通しています。そのように代替品が溢れる国内市場において、爆発的なヒット製品が新たに生まれる可能性は、低いと言わざるを得ません。
一方、例えば若年層が人口の大半を占めるフィリピンなど、経済発展の可能性を秘めた新興国では状況が異なります。順調に成長が進み国民が豊かになれば、既に日本に普及しているあらゆる製品について、改めて大きな需要が生まれるでしょう。
海外進出を行う最大のメリットは、何と言っても、このように新たな販売先の開拓が可能となる点に集約されます。
【2】多様な発想を取り入れる
また、海外進出に伴う利点は新市場の開拓だけではありません。
例えば、ある大手家電メーカーは、東南アジアにおいて、日本人ではなく現地の社員に商品開発の企画を任せました。各国の生活や人々の好みを熟知した現地社員が開発することで、その地域の需要にマッチしたヒット商品が生まれる可能性が高まると考えたのです。
そして、そのようなプロセスのもとに生まれたアイデアが、国内製品の改良に関して意外な閃きをもたらす可能性もあります。商品開発に異文化の風を取り込むことによって、日本市場においても、今まで見つけることのできなかった突破口が開けるかもしれません。
海外進出のデメリット
【1】人件費
経済成長に伴う「人件費の上昇」は、現地法人にとって大きな懸念事項となります。
そのため、各企業は長期的な人件費の推移を予測した上で事業展開に取り掛からなければなりません。
【2】為替変動
急激な為替変動についても、企業にとっては大きなリスクとなり得ます。対策としては、契約が締結した時点で、一定のレートにおける価格取引を約束する先物予約などが有効です。
【3】人材育成、労務管理など
企業の海外進出には、「現地人材の確保・育成・労務管理」にまつわる問題も付きまといます。特に諸外国へ進出したばかりの企業からは、せっかく優秀な現地人を採用してもすぐに他社に引き抜かれてしまうなどの悩みも多く聞かれます。また、国によっては労働者が頻繁に待遇改善を求めてデモやストライキを起こすなど、労使の関係が不良状態にあるケースも少なくありません。
出勤・退勤時間を含む基本的な就業規則に対する認識についても、文化の違いから齟齬が発生する可能性が大いに考えられるため、対策が必要となるでしょう。
おわりに
企業の海外進出に伴うメリット、デメリットをご紹介しました。
海外事業を検討中の企業様に、今回の記事がマネジメントのご参考になれば幸いです。