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米国リスク【第3回】任期満了がせまる米国オバマ政権

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米大統領選が本格化しつつある中でオバマ政権の任期は1年半を切りました。現在、議会上下両院において野党・共和党が多数を占めていることから内政面での政策実現は期待できず、外交面でのレガシー(遺産)作りが政権運営の中心となっていると言われています。

特に中国がアジア・太平洋で存在感を増す中で環太平洋経済連携協定(TPP)を立ち上げることが最大の仕事となっています。果たして財政的な制約のある中で米国の覇権を守るためにオバマ大統領はいかなるレガシーを残せるのか注目されます。

連載第3回の今回は、米国オバマ政権の現状と課題について考えてみましょう。

 

▼目次

カウントダウンに入ったオバマ政権

オバマ大統領が2008年の大統領選で「チェンジ」を掲げて勝利して以来既に7年近くが経過しました。大統領の支持率がかつての7割から4~5割へと下落していることは、これまでの道のりが平坦でなかったことを表していると言えるでしょう。

大統領は格差の無い社会の構築を目指して、医療保険改革や金融規制の強化など弱者救済と強者の規制を進めてきました。しかし任期中の株価は2009年3月を底に右肩上がりが続いたものの、株価の上昇はかえって格差を一段と拡大させたという声も聞こえます。

過去6年半の経済運営について見れば、バーナンキ、イエレンFRB議長による量的緩和策を支持し、リーマンショックによる経済の底割れ回避に努めてきました。また労働市場において失業率は5.3%へと下がり新たな雇用は月20万人のペースで創出されるなど「量」の面で改善が進んできました。しかし不本意なパートタイムや長期失業者の割合が歴史的な高水準で推移するなど「質」の回復はまだ遠いのが実情です。

このような状況で2017年1月の任期満了まで1年半余りとなったオバマ大統領はレガシーを残そうとしています。とはいえ、議会の多数を野党・共和党が占めていることから、内政問題の政策実現は容易ではなく、大統領の権限が発揮できる外交問題へと傾斜を強めているのは当然の帰結とも言えるでしょう。

その成果が、先日のキューバとの54年ぶりの国交正常化であり、さらに米国を中心とした貿易体制の確立を目指し、2010年3月に始まったTPP(環太平洋経済連携協定)交渉を大筋合意に導いたことです。

TPP交渉は米国の覇権を守る

東シナ海や南シナ海において海洋権益を主張する中国のプレゼンスの高まりは目覚ましいものがあります。このような中国の勢力拡大を前にして、アジア諸国は軍事面では米国頼みであるものの、通商面では中国への依存度を高めているのは明らかです。

この傾向にくさびを打ち込もうと米国を中心に環太平洋の国々で自由貿易圏をつくろうとするのがTPPの狙いで、その交渉はついに米国アトランタで行われた閣僚会合を経て、大筋合意として結実しました。

世界の警察官を続けることは難しい

2001年の同時多発テロを機に、ブッシュ政権はイラクそしてアフガニスタンでの対アルカイーダ作戦を進めました。遅々として十分な成果をあげられない状況が続き、米国国内に厭戦気分が広まった結果、オバマ政権下で撤兵が進んでいます。

また、ロシアのクリミア併合、ウクライナ内戦そしてイラク北部における過激派組織によるテロの頻発など地政学リスクの拡大もオバマ政権下で発生しました。その契機は、2013年8月にシリア空爆をオバマ政権が躊躇したことと言われています。

この背景には第二次世界大戦以降、世界の警察官として世界の軍事・外交領域を主導してきた米国の外交方針の転換が指摘されます。米国は、エネルギー自給が可能になり、中東などからのエネルギー輸入への依存度が低下したことや、財政的負担に耐え切れなくなりつつあり、従って世界の警察官としての看板を下ろそうとしているという面があります。

実際、米国の財政支出における国防費が占める割合は高く、その結果赤字財政が膨らみ、2011年には財政破綻の危機に直面して米国債の格付けがトリプルAから格下げされたのは記憶に新しいところです。

まとめ

過日、日米両政府は「防衛協力のための指針(ガイドライン)」の見直しを行い、日米がアジア太平洋地域で連携し、平時から有事まで切れ目なく対応することとなりました。日本が様々な面において米国を助け、また米国の肩代わりをすることは現実味を帯びつつあると言えるでしょう。先日の安保関連法案の成立は、このような背景があることを抑えておくと良いでしょう。

risk_profile ●コラム筆者プロフィール●

名前:テムジン
リスクマネジメント界のチンギス・ハンです。
一言:迷える子羊たちに、世界各国のカントリーリスクを
分かりやすく説明します。

 

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