今回は,前回の続編として,インドの破産・倒産法に関するニュースをお届けします。
2016年5月,インドにおいて,破産倒産法(The Insolvency and Bankruptcy Code, 2016)が制定され,同年12月1日,同法の一部が施行されました。
▼目次
インド破産・倒産法制定の背景
従前,インドでは,破産・倒産に関する体系的・統一的な法令がなく,法人の倒産手続に非常に長い期間がかかっていました(世界銀行の調査によれば,インドでは,企業の破たん処理に要する期間は平均で4.3年とされています。)。そのため,企業破たんの際の手続きを統一化し,必要となる期間に予測可能性を持たせる法令の制定が,長く望まれていました。
今回の破産倒産法は,破産・倒産処理に要する期間に180日間(90日間の延長が1回のみ可能)という制限を導入した,破産・倒産処理の基本法となるもので,今後の企業の破たん処理の円滑化・迅速化が期待されています。
インド破産・倒産法の特色は?
申立人となることができるのは,①金融債権者,②事業債権者,③債務者の三者で,申立てには,10万ルピー(2017年4月現在で,約17万円)以上の額の債務の不履行があることが必要とされます。申立てが承認されると,会社法審判所は,破たん企業の資産や債務を管理する管財人を選任し,金融債権者によって構成される債権者集会が,再生計画を検討します。債権者集会は,再生計画の検討を行いながら,倒産手続の開始から180日以内に,当該企業を再建させるか,清算させるかを決定します。
このように,①まず,再生可能かが検討される点,及び,②金融債権者と事業債権者が区別されている点は,インドの破産倒産法の特色の一つと言えるでしょう。
まとめ
破産倒産法は,インドにおける破産・倒産手続を円滑化・迅速化させるものとして,期待されています。2016年12月の施行後,同月中に,初めての申立てが金融債権者によりなされ,それを皮切りに,複数の案件が会社法審判所に係属しています。これらの案件が180日以内にどのように処理されていくかは,2017年のホットトピックの一つとなりそうです。
(プロフィール)
弁護士法人堂島法律事務所(東京事務所) 弁護士 瀧澤 渚氏
慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2014年弁護士登録。外資法律事務所勤務の後、2016年より堂島法律事務所所属。企業法務・労務を中心に、英米法等の海外法務にも精通。