インドでは最近、外国人駐在員の人の間で「アダールカード」が大問題になりました。アダールカードとは日本でいうマイナンバーのようなものです。
従来、インドの身分証明書と言えば、PAN(納税者番号)や自動車免許証がスタンダードだったのですが、PANであれば子どもや専業主婦は保有していないですし、そもそもインドでは課税最低限にひっかかる人が少ないのが実情です。一方、自動車免許証であっても車を運転しない人は保有していないので、国民全体に統一された管理番号というものが存在しなかったのです。
インド政府は国民の徴税率のアップを狙い、13億人の国民全員を一括管理できる番号を作ったのですがそれがこの「アダールカード」になります。
政府から登録業務を委託された業者が、IDカード、住所証明を確認したうえで、顔写真、指紋、虹彩を登録することで発行されます。
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「アダールカード」は外国人も必要?
問題になったのは、このアダールカードって外国人であっても必要なのか?という点です。
当初、正式な政府見解も発表されていなかったので意見がわれていたのですが、2017年6月に出された通達で一旦「外国人は不要」となりました。
ただ、ここが非常にインドらしいのですが、12月に入ってからアダールカードを持っていないことを理由に銀行口座を凍結される外国人が続出し、結局外国人も大挙してアダールカードの取得に動きだしたのです。
在インド日本大使館も結局このアダールカードを取得するように勧める通達を出しました。政府見解と窓口の対応がずれるのはインドの常とは言え、現地外国人社会は大混乱しました。
800万人分のアダールカードが無効に?
さて、このアダールカード問題はこれで終わりませんでした。
なんとこのアダールカードの申請を委託された業者の仕事が非常に杜撰であることが判明したのです。必要書類を確認していない、指紋は記録したが虹彩は記録していないなどの不備がどんどん明らかになり、政府は800万人分のアダールカード登録を無効とし、今後のアダールカード登録は銀行を窓口としたもののみとするとしました。そのため12月後半は、毎日銀行にアダールカードの登録を求める長蛇の列ができ、再び大混乱になりました。
今はようやく落ち着きを取り戻しましたが、2月6日の携帯電話契約とアダールカードのリンク期限、3月31日の銀行口座とアダールカードのリンク期限を控えて、再び問題が顕在化することが懸念されています。
まとめ
アダールカードは「インドのマイナンバー」。
登録しないと、携帯電話や銀行口座がストップするので、基本的に取得するべき。
【プロフィール】
野瀬 大樹(のせ ひろき) 公認会計士・税理士
大手監査法人勤務の後、NAC国際会計グループに参画、インドのニューデリーにて主に日系企業をサポートするコンサルティング会社NAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、同代表に就任。インド各地にて、会計・税務・給与計算に加え、各種管理業務に関わるコンサルティングサービスを提供している。
事務所HP:http://in.nacglobal.net/