海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
2021年も世界ではいろいろなことがありました。海外取引関係だけを見ても、英国のEU離脱完了、スエズ運河座礁事故、世界的コンテナ不足と輸送費の高騰、資源や原材料価格の高騰、RCEPの発効確定(2022年1月から発効)、など企業経営に大きな影響を与える出来事があった年でした。
2022年もきっと思わぬ事が起きるはずです。サプライチェーンの見直しを余儀なくされるかもしれません。起きてしまった脅威を変化や機会ととらえ、2022年に上昇する準備に着手しましょう。
コンテナはどこへ行った?
1.輸送にまつわる騒動
2020年から続くCovid19禍によるコンテナ不足と物流現場労働者不足(外出できない)、2021年3月のスエズ運河座礁事故、物流分野の需給バランスが崩れたことによる輸送費高騰、など2021年は輸送に関連して様々な影響がありました。
何をすべきか?→ 1)調達元の多元化 2)輸送方法の多元化 3)リスクシナリオの策定(事業継続計画=BCP=の策定) といった事項の検討と実施が必要ということです。
2. 原材料や部品の供給不足
Covid19の影響で世界的に生産現場が事実上ストップして供給力不足が生じた分野がありました。また、物流分野の諸課題(費用の高騰、コンテナ不足による輸送時間の長期化)も事態の鎮静化がなかなか見えていません。その結果、原材料や部品不足が発生し、特にIoTの浸透で需要急増する半導体が大きな影響を受けました。半導体不足による大手自動車メーカーの生産調整はしばしばニュースに取り上げられています。今後電気自動車の比率が高くなるとサプライチェーンや半導体調達に関するリスク対策がより一層求められます。
何をすべきか?→ 1)調達元の多元化 2)リスクシナリオの策定(事業継続計画/BCPの策定) といった事項の検討と実施が必要ということです。
3. DX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術による変革)の深化
身の回りの様々なものがIoT対応となり、ARやVRが開発や設計部門で使われるDXが益々深化しています。特に製造装置やロボットの遠隔操作、研究開発での仮想空間の活用、3Dプリンターの活用、等の分野でDXはなくてはならぬものになりつつあります。3Dプリンターの遠隔活用が更に進化すればA国のデータを使ってB国の3Dプリンターで物品を製造することもできる、すなわち物品のタイプによっては貿易が不要になる時代がくるかもしれません。
何をすべきか?→ 1)ノウハウを持つ外部との連携強化 2)秘密保持契約・守秘義務契約(NDA)の締結 3)新規相手の調査 といった事項の検討と実施が必要ということです。
4. 脱炭素化への動き加速
電気自動車(EV)へのシフトに代表される脱炭素化の動きが今後ますます加速して行きます。そこにビジネスチャンスがあり、炭素排出量を考えたサプライチェーンを作る必要もあるということです。
何をすべきか?→ 1)調達元の多元化 2)輸送方法の多元化 3)リスクシナリオの策定(事業継続計画=BCP=の策定) といった事項の検討と実施が必要ということです。
5. 新たなFTA/EPA(RCEP)の活用
2022年1月からRCEPが発効します。日本にとって、中国・韓国と結ぶ初めてのFTA/EPAです。ASEAN諸国を含めた中国や韓国との最適サプライチェーンを再考する機会です。
ただし日本から中国への輸出において中国の関税が一気に無税となる品目ばかりではなく、11~20年をかけて段階的に関税削減されるものも多く存在するので、個別にシミュレーションすることが不可欠です。品目によってはRCEP協定の特恵関税率の方が通常の関税率(最恵国関税率=MFN関税率)より高いものもあるので注意が必要です。
何をすべきか?→ 1)RCEPを利用した場合の自社品目の関税率や原産地規則に関する調査 2)自社品目の構成原材料に関する調査(調達元、HSコード、コスト) 3)RCEPを含むFTA/EPAに詳しい機関や企業の活用 といった事項の検討と実施が必要ということです。
参考サイト:https://blog.conocer.jp/haga-overseas-sales29/
2021年に顕在化した諸課題は2022年も続くことが予想できます。調達元の多元化、サプライチェーンの見直し、DX強化のための新パートナー発掘、といった活動においては外国の新たな企業や業者とのコンタクトもあることでしょう。そうした相手が取引するに値するかということを事前に調べておくことが非常に重要です。是非コノサーサービス利用をご検討ください。
https://www.conocer.jp/
まとめ
2021年に顕在化した諸課題 1)物流分野の輸送時間長期化やコスト高騰 2)原材料・部品不足とコスト高騰 3)DXの深化 4)脱炭素化の加速 は2022年も大きな課題と言えます。2022年から発効するRCEPを積極的に活用し、こうした諸課題を解決しましょう。新規パートナー候補の信用調査も忘れずに行いましょう。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングサービスを、ジェトロや中小機構などの公的支援機関および民間企業向けに提供している。
URL: https://sub.toro-llc.co.jp/