海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
EMSで届いた物品を開梱したら破損していた、というクレームが買い手からありました。さあ、どうしましょう?トラブル発生です。
貿易取引では物品(貨物)損傷に備えて損害保険をかけるのは当然です。取引規模は小さいながら、EMSを利用した越境ECでも同様です。
EMSの損害賠償上限は、何も手続きしないと2万円です。それで足りますか?
貨物保険を忘れずに
インコタームズ2020のCIFは、Cost(貨物の価格), Insurance(貨物保険料), Freight(運賃)で構成されています。貿易では必ず売り手か買い手のいずれかが貨物保険Insuranceをかけます。
EMSも貿易ですから貨物保険をかけます。通常の貿易と違うところは、あなたが何も手続きしなくてもEMSでは自動的に2万円の損害保険が付与される、ということです。
では、貨物価格が2万円を超える場合はどうすればよいでしょうか?
EMSでは2万円を超える損害賠償を希望する売り手に、追加の損害保険サービスを提供しています。貨物価格を記入することで保険に加入できるので、発送申込時に手続きを忘れないようにします。
保険価格は次の表から調べます。尚、補償上限は200万円です(200万円の場合の保険金額4,950円 保険料率約0.25%弱)。
https://www.post.japanpost.jp/int/ems/service/damage.html
EMSラベルの記載事項
EMS伝票の記載事項を確認します。相手の氏名、住所(都市、国)、電話番号、はわかっていますか? もし未確認の情報があるならば受注前に相手に問い合わせます。
https://www.post.japanpost.jp/int/use/writing/ems.html
尚、当方の販売物品についても、HSコード、英語名称、原産国、数量、正味重量(梱包材重量を含まないネット重量=貨物のみの重量)を確認しておきます。HSコードの検索は次の過去記事を参照ください。
貴重な第一歩「HSコード」
https://blog.conocer.jp/haga-overseas-sales02/
金額が20万円以下か、20万円を超えるか
物品価格が20万円を1円でも超えると正式な通関手続きが必要です。
税関の案内(価格が20万円を超える国際郵便物の通関手続の見直しについて)
https://www.customs.go.jp/tsukan/yubin/yubin210216.htm
日本郵便(株)は通関手続き代行業務を行うことができるので、販売価格が10万円台後半の場合は事前に通関手続きを代行した場合の費用を確認して、販売価格が20万円を超えるかどうかを試算しておきましょう。
日本郵便の案内(外国あて郵便物の通関手続のご案内)
https://www.post.japanpost.jp/int/information/important/tukan.pdf
日本郵便(株)以外の通関業者を利用する場合は、次のAEO認定通関業者から探すとよいでしょう。
https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/kaizen.htm#02 ← 認定通関業者一覧からエクセルファイルをダウンロードする
価格提示、消費税免税、受注
外国の問合せ元に対し、物品の価格+EMS送料+貨物保険(2万円を超える損害賠償の場合)+通関費用(販売価格が20万円を超える場合)の合計を連絡します。合計値を物品の数量で割ったものが単価となります。輸出なので日本の消費税はかかりません。10%(軽減税率は8%)を上乗せしないようにしましょう。仕入れ税額の控除を含む消費税関連は次のサイトを参照下さい。
輸出取引の免税(国税庁サイト)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6551.htm
決済は自社ECサイトで利用している決済システム、あるいは決済代行サービスやWISEなど割安手数料のサービスを利用します。
外国とのEC取引ゆえ、万が一の回収リスクに備えて全額決済を確認してから出荷手配を行うようにします。くれぐれも代金受領前に物品を出荷することのないよう注意します。引合い先が法人である場合は事前に信用調査を行いましょう。
まとめ
物品損傷に備え、2万円以上の出荷ならば必ず損害賠償保険をかけます。送料と貨物保険他の金額確認後に販売価格を計算し相手に伝えます。実際の出荷は必ず全額入金後に行います。販売価格20万円を1円でも超える場合は正規の通関手続きが必要です。輸出取引は消費税免税です。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングサービスを、ジェトロや中小機構などの公的支援機関および民間企業向けに提供している。
URL: https://sub.toro-llc.co.jp/