海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
当社は部品などの生産財を扱っている、当社は設備(産業財)を扱っている。こういう企業さんも多いことでしょう。これらはオンライン商談を数回行って成約する、という品目ではありませんね。
そんな品目だからこそ最初のオンライン商談が重要です。次のステップに段階を上げながら商談継続して行くにはどうしたらよいでしょうか?
買い手から問合せがあった時点で、商談の57%は決まっている?
57%とは?
生産財や産業財はまさに法人対法人の商談ゆえ、段階が進むにつれて相手側の購買・調達・資材、技術・設計、製造・品質、経理・財務、人事、法務・知財、といった各部門と話を行う可能性があります。買い手は、取引先の営業にコンタクトする時点で既に購買決定に至るプロセスの57%を終えている、という調査結果もあります。法人同士の商談では買い手側の内部調整がかなり進んでいる、すなわち独自に情報収集を進め、仕様やコストだけでない他の要素についても買い手側で練り上げられている、という認識で臨む必要があるということです。そのような相手に自社特徴や利点を説明するだけでは、競合相手と比較されて価格競争(値引き要請)の場に引きずりこまれるのが関の山です。
生産財・産業財の商談手順
設備の場合は高額でもあり導入年度の予算化が必須です。また、導入場所の周辺インフラ(光熱水道など)の準備が必要です。原材料や部材は、設計図への反映、当該品目を組み込んでの試作、評価、合格、仕様書承認、という手順が伴います。いずれの場合も数か月以上の商談が当たり前の世界です。2019年末のパンデミック以前でもこうした品目の商談は、売買双方の複数部門が何度も顔を突き合わせて数か月、場合によっては数年かけて成約に至るビジネスでした。オンラインではサンプルを手にしながらの商談や、図面の特定箇所を示しながらの商談は難しいと言えます。
相手はなぜ当社と商談を希望するのか?
相手はなぜ当社との商談を希望するのでしょうか?生産財や産業財の取引では、既存の何か(他社)に代替するもの、新規のもの、の可能性を考えます。
他社代替の場合、既存他社の何かに満足していないがゆえに当社製品への変更可能性を検討しているということなので、相手が既存他社のどういう点を問題視しているのかを考えます。品質、性能、納期、耐久性、保守対応、納期、環境対策、認証や規制対応、など様々な要素およびそれへの対応を検討します。
新規の場合、当社がその分野で実績があるからこそ引合いに至るわけで、上記の代替の各要素に加えて納入実績と顧客評価についても情報を整理しておきます。
オンライン商談に臨む基本的方針は、相手に解決したい課題が存在し、その課題を当社製品やサービスが解決できる、という筋道を作ることです。
- 相手の課題を把握する。課題をA、B、Cとする。
- 当社製品やサービスが提供する機能X、Y、Zが、課題A、B、Cを解決する。
- A→X、B→Y、C→Zという説明を行う。
生産財や産業財の初回商談で解決策を提案できることは稀です。往々にして自社製品やサービスの説明に終始してしまい、聞く方の相手としては的外れの商談になる可能性があります。このような空振りを防ぐため、初回商談では相手の関心・興味・課題を詳しく聞き、考えられる問題点を指摘するに留めるのがよいでしょう。想定した、あるいは想定していなかった問題点を指摘された相手としては、どうしたら問題点を解決できるかの具体策を知りたいはずです。2回目以降の商談で解決策・具体策を当社の製品やサービスと関連付けながら話をします。
次回は、生産財や産業財におけるオンライン商談本番の進め方について説明します。
まとめ
生産財や産業財では、相手の関係者も増えます。当社と商談を希望する理由や背景を考え、相手の課題を放置すると起きるであろう問題点を洗い出し、当社が具体的な解決策を提供できますよ、という流れを考えます。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングサービスを、ジェトロや中小機構などの公的支援機関および民間企業向けに提供している。
URL: https://sub.toro-llc.co.jp/