
海外マーケティング支援を行っているトロ代表の芳賀 淳です。
前回は利益の種類について説明しました。
ところが、世界には利益とは少し違う概念で商売を考える人たちがいます。どういうことでしょうか?
画像出典:生成AIにて作成
1.(入る金)マイナス(出る金)イコール な人々
海外を訪問していると、高グレードなのに格安料金のホテルに出会うことがあります。中には、建設工事中にもかかわらず完成した部屋を格安で提供するケースもあります。格安の見返りとして昼夜を問わず響く工事の音や振動は避けられません。
こうしたサービス?の背景には、出て行くお金を少しでも補うために、稼働できる部屋を提供して現金(キャッシュ)を手に入れる、という考えがあります。キャッシュフローを意識した経営を行っている、ということです。
もちろん会社の決算では会計上の利益を記載しますが、経営指標としてキャッシュフローを重視する商売をしているのです。
2.キャッシュフローを意識するとはどういうこと?
要は、出る金より入る金の方が大きい、ということです。
毎月100万円の収入であっても支出が120万円では20万円の赤字です。毎月40万円の収入であっても支出が20万円では20万円の黒字です。後者のように、入る金>出る金、を重視するのがキャッシュフロー意識です。支出を営業経費とすると、売上マイナス営業経費イコール営業利益、になります。
画像出典:筆者作成
3.キャッシュフローを意識する場面とは?
高金利の国では日々の業務を行う資金を借りると、それが2カ月程度の短期間であっても返済する金利が無視できない額や率になることがあります。例えばお金を借りると年利6%の国では、2か月の金利は12カ月金利の6分の1、つまり1%の金利を返さないといけません。
逆に、もし2か月分の現金を借入れ以外の方法で用意することができるならば1%相当の費用節約になります。
かつての香港では、キャッシュカードより現金で買う方が安いことが多々ありました。販売店にとって、キャッシュカードは数%の利用手数料に加えて、入金時期が売上の翌月や翌々月になることから、入金時期までの金利負担額に近い値引きをしてでも現金を手に入れたいという背景がありました。海外の取引相手からできるだけ早く代金回収をしたい時は、決済通貨の金利動向を考えながら、早い支払いに対して価格調整を適用することも営業の1手法かもしれません。船積み1か月後ならば1,010万円ですが、船積み前1週間の支払いならば1,000万円、等の提案ができます(5週間で1%の金利は年利で10%以上です)。
キャッシュフローの意識が高い取引相手だと、儲けているにもかかわらず販売者への支払時期を遅らせることがあります。売掛金をなるべく小さく、買掛金をなるべく大きくすることが理由の1つです。支払時期を守ることは商売の鉄則ですが、外国にはこのような業者も存在するので事前の信用調査はとても重要です。
外国の業者の中には、前回述べたEBITDA、Earnings Before Interest, Tax, Depreciation, Amortization(金利、税、減価償却前利益)を重視するところがあります。営業利益に減価償却費相当の現金を足した利益概念ゆえ、もし相手がEBITDAという用語を交渉時に言い出してきたら、キャッシュフロー重視の相手である可能性が高いです。
キャッシュフローには今まで述べた営業キャッシュフローの他に、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローがあります。さらに知りたい方は専門のサイトや書籍で調べて下さい。
まとめ
キャッシュフローで考える取引相手は、時間を金利という費用で計算します。入金は早く、出費は遅く、という考えです。取引通貨の金利動向も考えながら、時には価格調整による早期支払いを提案することも1つの交渉材料です。相手が考える利益がどのような概念なのか、交渉時によく調べましょう。
【プロフィール】
トロ 代表 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった。豊富な海外販路開拓や海外業務・貿易実務経験を活かしたアドバイスや研修サービスを、民間企業およびジェトロや大阪商工会議所などの公的支援機関向けに提供している。これら機関向けセミナー実績も多数有する。日本政策金融公庫「輸出ノート」や「輸出コラム」の執筆を担当する。
メール:info@torobull.jp