海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
前回の記事で貿易取引の当事者や役割について説明しました。海外との取引は「モノ」「カネ」「カミ」の流れを理解して書類をきちんと作ることが大切、ということです。
今回はそのうち「モノ」がどのように流れるか、を説明します。
モノ、情報はこのように流れます(輸出の場合)
出典:合同会社トロ資料
- 売主は注文書(P/O)を確認します。品目、仕様、数量、金額、納期を確認の上で生産や調達手配を行います。
注文書の日付、注文番号、発注者名と連絡先、決済条件、受渡条件(インコタームズ)、梱包条件(もしあれば)、荷印(Shipping Mark/Case Mark、もしあれば)、も今までの打合せと合意内容の通りかを確認します。
食品と木材以外の品目は、大量破壊兵器を含む軍事用途の製造に利用されることがないかどうかの確認も行います(安全保障貿易管理の説明は割愛します)。 - 生産あるいは調達手続きが完了したら、売主は梱包、出荷手配、梱包情報を船積書類に反映します。具体的には船積指示書(Shipping Instruction=S/I)やインボイス等の書類に記載します。
- 売主は直接あるいは乙仲(フォワーダー、海貨業者、通関業者)経由で船や航空機の荷物空間(船腹)を予約します(booking)。インコタームズがFOB/FCAのように買主が配船権を持つ場合は、買主の代行で手配することもあります。
- 売主は貨物保険手配をします(CIF/CIP)。あるいは、買主は売主からの輸送(仮)情報に基づき貨物保険手配をします(FOB/FCA、CFR/CPT)。
- 売主は貨物を港湾指定場所(コンテナ単位ならばコンテナヤード=CY、混載ならばコンテナフレイトステーション=CFS、航空輸送ならば空港の指定倉庫)に搬入します。売主は船積書類を添えて、直接あるいは乙仲経由で輸出申告をします(輸出通関)。輸出通関価格はFOBです。インボイス価格がFOB表記でない場合、FOB価格の問合せがあるかもしれません。輸出通関統計の金額データはFOB価格ということも覚えておきましょう。
安全保障貿易管理面で経済産業大臣の許可を得るべき品目が無許可で輸出されないよう、税関でチェックします。 - 輸出許可が出てから、売主は船積書類や情報を買主に提供します。貨物を輸送します。
- 買主は受領した船積書類の内容を確認し、直接あるいは乙仲経由で輸入申告をします(輸入通関)。
- 輸入申告書類の確認後、買主は関税と消費税を納付し(納税後に輸入許可がでます)、貨物を引き取ります。
まとめ
「モノ」「情報」を関係者・当事者にきちんと提供することが大切です。
「モノ」「情報」の流れを確認し、手順通りに仕事を進めましょう。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングや研修サービスを、民間企業およびジェトロや中小機構などの公的支援機関向けに提供している。これら機関向けセミナー実績も多数有する。
メール:info@toro-llc.co.jp
URL: https://haga-school.thinkific.com/courses/947f8d