海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
2022年を振り返り2023年に備えましょう。足掛け3年以上のテーマになるものも含め、課題の内容は何なのか、それに対して何をなすべきかを考えてみます。
2022を振り返る
*STCとはSecurity Trade Control:安全保障貿易管理のことです。
出典:合同会社トロ資料
2022年を振り返る前に、1年前2021年末に何を課題と見なしたでしょうか。
- 輸送にまつわる騒動(コンテナ不足、輸送費の高騰、等)
- 原材料や部品(特に半導体)の供給不足
- DX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術による変革)の深化
- 脱炭素化への動き加速
- 新たなFTA/EPA(RCEP)の活用
どうやら1年経っても、大半は引き続き課題のままのようです。
2022年は新たに次のようなことが登場しました。
経済安全保障への意識
2022年初頭にロシアがウクライナに侵攻したことで食糧や化石燃料のサプライチェーンが滞り、需給関係や価格面で世界が大きな影響を受けました。食料自給率の低い日本では多くの家庭が食料品の値上げに直面しています。
こうした状況では、地政学リスクを想定した経済安全保障への取組み、具体的には1)調達元の多元化 2)情報収集・分析の重要性がアップ ということを意識して日々の活動にあたることが求められます。
また、米中の経済摩擦が激化し、米国による中国向け半導体の供給や半導体関連技術提供の制限が強化されました。米国製半導体を内蔵した日本製品を中国に輸出することが難しくなるということです。
製品の売り先だけでなく、原材料や部品調達のサプライチェーンまでを考慮したビジネスが求められるようになりました。
関連情報のサイト https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2022/1002/2c2eecd972c6c47e.html
為替変動(ドル高、円安)
化石資源や物流費の高騰に起因する米国のインフレを抑えるため、米国の中央銀行にあたる連邦準備制度(FRB)が度重なる利上げを行いました。それにより日米間の金利差が大きくなり、年初は110円台だった円ドルレートが4月に120円台、7月に130円台、10月に140円台へと一気に円安へと振れました。
円安基調は輸出に有利という声もありますが、食糧や原材料を輸入に依存する日本にとっては逆風の側面もあります。
為替レートは政府の金利政策や国際紛争などですぐに揺れ動くので、信頼置ける団体や機関からの情報収集を行うことが重要です。
脱炭素に加えて人権意識を加えたSDGsへの取組み強化
ウイグルの綿生産など、原材料や部品のサプライチェーンを遡ると強制労働や児童労働によって供給されたものもあることが明らかになりました。そのようなサプライヤーには是正を求める、取引開始時に人権を無視した労働が行われていないことを誓約させる、契約書に盛り込む、といった措置が益々重要になってきます。事業者がサプライヤーの生産現場を確認することも今後求められるようになるかもしれません。
販売先の信用調査だけでなく、サプライヤーやサプライチェーン上に違法労働行為が存在しないことを調べる必要性が今後高まることでしょう。
関連情報のサイト https://www.jetro.go.jp/world/scm_hrm/
責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン(2022年9月制定) https://www.meti.go.jp/press/2022/09/20220913003/20220913003-a.pdf
信用調査にはコノサーサービス利用をご検討ください。
https://www.conocer.jp/
FTA/EPAのHSコード年度が一部変更(2023年)
マイナーチェンジですが、2023年1月1日(の輸入分)からRCEP協定ではHS2022版(現状HS2012年版)が適用されます。
2023年3月1日(の輸入分)から日アセアン協定ではHS2017版(現状HS2002年版)が適用されます。
該当する協定を利用する事業者においては今のうちに貨物と原材料のHSコードをきちんと調べておきましょう。
HSコードについてはこちらの記事をご覧ください。
https://blog.conocer.jp/haga-overseas-sales02/
まとめ
2021年に顕在化した諸課題に加え、2022年は 1)経済安全保障への意識 2)為替変動 3)人権意識を含むSDGsへの配慮 といった課題が顕在化しました。2023年は4)FTA/EPA協定で適用されるHSコードの年度変更(RCEPと日アセアン) といった事項にも対応しましょう。販売先に加え、サプライヤーの信用調査も忘れずに行いましょう。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングサービスを、民間企業およびジェトロや中小機構などの公的支援機関向けに提供している。これら機関向けセミナー実績も多数有する。
メール:info@toro-llc.co.jp
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