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英文契約書の構成(各論③契約先への通知)(弁護士 瀧澤渚)

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▼目次

はじめに

契約書を見ていると,様々な場面において,契約当事者が,他方当事者に対し通知を行うことがわかります。

例えば,解除条項における「甲及び乙は,相手方が以下の事由の一に該当するに至った場合には,相手方に対し,通知をすることにより,直ちに本契約を終了させることができる。」といった場合の通知は,その一例です。

しかし,よく考えてみると,「通知」とはメールでも良いのでしょうか。それとも,書面でなければならないのでしょうか。また,「通知」をしたことになるのは,通知を出した時なのでしょうか。それとも,相手方が通知を受け取った時なのでしょうか。

当事者の距離が離れた国際取引では,こうした事項についても,きちんと取り決めておくことが肝要です。そこで,今回は,通知条項についてのチェックポイントを確認していくことにします。

通知方法

通知の方法としてメジャーなのは,書面による通知です。解除の通知のように,重要な通知については,書面の形をとるのみならず,書留や配達証明郵便のシステムを利用し,後々配達の記録が残るようにしておくのが通常です。

その他にも,通知の手段としては,電報,FAX,メール等,様々考えられます。

迅速性を重視するなら,FAX,メール等の簡易な方法もあり得るかもしれません。他方,慎重さを期するのであれば,見逃したり,改ざんされるおそれが相対的に低い,書面での通知が安心ということになるでしょう。

このように,通知に関する条項をチェックする場合には,当該取引の内容や取引相手に照らし,記載の方法が適切であるか検討することが必要です。

通知先

通知条項には,通知先の住所,支店名,担当役職名を記載しておくこともあります。

窓口を特定しておくことで,会社が通知を受け取ってすぐに担当者が対応できる等のプラスの効果がありますので,必要がある場合には,このような定めをしておくことも有効です。

効果発生時期

通知の効力発生時期についての定めは,国によって異なります。日本では,意思表示が到達したときにその効力が生じるとする到達主義が原則となっており(民法97条),意思表示を発したときにその効力が生じるとする発信主義は例外的なものとなっています。他方,諸外国では,発信主義を原則とするケースも見られます。そこで,効力発生時期を明確にし,不測の事態を招かないためにも,契約書において,効力発生時期を定めておくと安心です。

効力発生時期を定めておく場合の定め方ですが,相手方が通知を受領したときを効力発生時期とするのが一番フェアのようにも思われます。

しかし,相手が通知を受領したかについては確認や立証が必ずしも容易ではありませんし,事故等で通知が届かなかったり,到達に日数を要した場合等には,なかなか通知の効果が発生しないので,通知者にとっては使い勝手がよくありません。そのため,発信主義が取る契約も散見されます。また,「通知の発送から●日経過後に効力が発生する」と間をとったような内容の条項もよく見られます。

チェックの際には,相手方の国の郵便事情等にもかんがみ,記載の条項が適切な内容になっているか見極めることが重要です。

☆契約書英語レッスン☆

契約書の最終稿及び契約書の完成版のことを,それぞれ,英語でどう表現するかご存知ですか?

正解は,前者は“execution version”で,後者は“executed version”です。現在分詞を使うと,“final version and nobody has signed”の意,過去分詞を使うと“final and signed version”の意になります。

細かいようで,全く違う意味になります。こうした表現にまで気を配って,取引に臨みたいものですね。

(プロフィール)

弁護士法人堂島法律事務所(東京事務所) 弁護士 瀧澤 渚氏

慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2014年弁護士登録。外資法律事務所勤務の後、2016年より堂島法律事務所所属。企業法務・労務を中心に、英米法等の海外法務にも精通。

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