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貿易保険と海上保険の違い
貿易保険と海上保険の違いをご存じでしょうか。
「貿易保険」とは、商品を輸出できなかった際や、商品の代金を回収できなくなった場合に、保険会社が取引上の損失を補填する保険です。つまり、企業が海外との取引を行う際に生じるリスクをカバーします。
一方、「海上保険」とは、海上輸送中の商品の滅失や毀損など、物理的な損害を補填する保険です。
貿易保険の種類
現在、貿易保険への民間保険会社の参入が自由となっています。しかし、その引受の中心は政府出資の独立行政法人である「日本貿易保険(NEXI)」が担っており、90%以上のシェアを占めています。
貿易保険には「貿易一般保険」や「輸出手形保険」などの約款による保険と、約款を追加・変更することが可能な特約による保険があります。日本貿易保険が運用している貿易保険の主な種類は以下の通りです。
【1】貿易一般保険
貿易一般保険は取扱量が最も多く、一般的な貿易保険です。輸出や仲介貿易で生じる損失を補填します。貿易一般保険には下記の保険が含まれます。船積前・船積後のカントリーリスクや、バイヤーの信用リスクによって生じた損失を補填します。
【2】限度額設定型貿易保険
あらかじめ補償限度額を設定した上で、船積前の一方的なキャンセルや、船積後に代金回収が不可能になった場合のリスクをカバーします。
【3】中小企業輸出代金保険
中小企業による海外貿易のリスクをカバーする保険です。
【4】輸出手形保険
輸出商品を回収するために振り出された荷為替手形を銀行が買い取った場合、その手形が決済されないために銀行が受けるリスクを補填します。
【5】前払輸入保険
輸入貨物の代金を前払いしたにも関わらず、輸入が不可能かつ前払い金の返還がされなかった場合にリスクをカバーします。
海上保険の種類
海上保険は、沈没や火災、座礁などの事故により発生した場合の損失だけでなく、ストライキや強盗など人為的なアクシデントで被った被害においても保証される場合があります。
最近はサプライチェーンマネジメントの発達により、物流全体をカバーする海上保険も登場しました。
海上保険は大きく分けて「船舶保険」「貨物海上保険」の2種類あります。
まず「船舶保険」には、船の所有者や使用者が契約者となる保険があります。この場合、海上運送中に発生したアクシデントによる損害が補償対象です。
また船舶保険には、造船者が契約者となる保険があります。この場合、船の建造中や修繕中に起きたアクシデントによる損害を補償します。
一方、「貨物海上保険」とは別名「積荷保険」とも呼び、海上輸送中のアクシデントによる損害を補償する保険です。
ただし、アクシデントの原因によっては貨物海上保険ではカバーできないものもあるため、注意が必要です。補償されない代表的な原因としては、「非保険者の故意の違法行為」「貨物の梱包が不十分・不適切だったことによる損害」「自然現象による摩耗」「積載船の遅延による損害」「核燃料・核廃棄物、原子力設備、核兵器、放射能物資などによる損害」「船会社の倒産による損害」などが挙げられます。
おわりに
貿易取引は、予測できないアクシデントやトラブルに巻き込まれる場合があります。そのようなリスクを回避するためにも、貿易保険や海上保険の種類を把握し、目的に合った保険に加入しましょう。貿易取引のリスクをカバーする貿易保険や海上保険は、今後ますます重要になってくるでしょう。