
海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
世界の文明の中心は西回りで移動する、という都市伝説があります。歴史が始まったとされる中東から、ギリシャ・ローマ、西欧、英国、米国、東アジア(日中)、と経済活況な地域は西回りで移動しているかのようです。
ということは、次の中心はインド洋周辺でしょうか?

1.国際協力銀行JBICのアンケートで首位のインド
JBICが毎年12月頃に公表する「わが国企業の海外事業展開に関する調査報告」(以下報告)によれば、インドが4年連続して「中期的な有望事業展開先国・地域(今後3年程度)」の首位に立っています。
報告では、現地マーケットの今後の成長性への期待が背景にあり、アンケートに回答した338社の6割以上から得票したということです(2位の米国の得票率は28%と3割未満)。有望理由には、優秀な人材、安価な労働力、などもあげられていますが、現地マーケットの今後の成長性をあげた企業が88%、現地マーケットの現状の規模をあげた企業が40%、と市場規模が最大の魅力と言えます。
冒頭の図に人口ピラミッドを載せています。人口が14億人を超え、若年層から生産人口層が非常に厚い構成であり、市場としての魅力は今後数十年間も続きそうです。
JBIC2025年度調査報告 https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2025/press_00128.html
2.バングラデシュは後発開発途上国LDC(Least Developed Country)を2026年11月に卒業する
2026年11月のイベントは米国議会選挙だけではありません。同月をもってバングラデシュがいよいよ後発開発途上国LDCを卒業します。
LDCメンバーについて(外務省サイト) https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/ohrlls/ldc_teigi.html
LDCを卒業するとどうなるのでしょうか? 貿易においてLDCには優遇策が与えられています。バングラデシュ原産品、例えば男性用綿シャツ(HSコード620520)を日本の業者が輸入するとします。HSコード620520の日本の通常関税率(MFN税率、最恵国待遇税率)は7.4%です。ところがLDC原産品は特別特恵関税率「無税」が適用されます。日本の業者がバングラデシュ製男性用綿シャツを輸入する場合、バングラデシュの原産地証明書を輸入通関時に提出することで関税率7.4%でなく無税が適用されます。注意することは、バングラデシュの輸出業者からInvoiceや船荷証券などの船積書類を送ってもらう際に、LDCであるバングラデシュ原産を証明する書類(原産地証明書)を必ず含めてもらう、ということです。ところがLDCを卒業するとこの方法が使えなくなり、日本輸入時に7.4%の関税を支払うことになります。

実は解決策があります。2025年12月22日に両国間でEPAの大筋合意をしました。つまり、近い将来において両国間でEPA協定に基づく関税減免を享受できる、ということです。両国間のEPA協定発効時期は明らかになっていませんが、バングラデシュがLDCを卒業するまでには発効されると予想されます。EPA協定が発効すればEPA協定に基づく原産地証明書を利用することで関税減免ができます。
日本・バングラデシュEPA大筋合意の概要(外務省・財務省・農林水産省・経済産業省) https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100954979.pdf
*バングラデシュ製繊維製品を日本に輸入する場合、日本の関税は即時撤廃される見込みです(上記URL資料に記載あり)。
3.インド、バングラデシュの人たちとの付き合い方で注意することは?
東アジアや東南アジア諸国の人たちとの付き合いはあっても、宗教や文化の違いからインドを含む周辺国の人たちとの付き合いを難しいと考える事業者さんは少なくありません。ヒンドゥー教(インド)のタブーとは? イスラム教(バングラデシュ、インド)のハラルについて詳しく知りたい、という声が聞こえてきます。
食事、生活、宗教(お祈り)、で特に配慮すべき点を詳しく記載した資料があります。こちらを熟読され、インド、バングラデシュとの新規ビジネス開拓を軌道に乗せましょう。
通訳ガイドテキスト(観光庁編) https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001893740.pdf ←P97からP129に宗教や食の注意事項について記載あり
言うまでもありませんが、決済状況を含む取引先の信用調査もしっかり行いましょう。
まとめ
2026年注目の国や地域の1つに、インドとバングラデシュがあります。市場の大きさと将来性(インド)、新たに日本が結ぶEPA協定(バングラデシュ)、を視野に入れながら、新規市場や調達元の開拓を行いませんか? 取引先の目途がついたら忘れずに信用調査も行いましょう。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングや研修サービスを、民間企業およびジェトロや大阪商工会議所などの公的支援機関向けに提供している。これら機関向けセミナー実績も多数有する。日本政策金融公庫「輸出ノート」や「輸出コラム」の執筆を担当する。
URL:https://sub.toro-llc.co.jp