海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
異動や配属の季節がやってきました。新たに貿易や海外部門の仕事に就く人も多いことでしょう。どうも職場の先輩には聞きにくいな、どこかにアンチョコないかな、という声も聞こえてきます。そのような人たち向けに、これを見れば貿易や海外部門でまず覚えておくことが分かりますよ、という内容をお届けします。もう一度復習したいなという人向けにも適しています。
尚、越境ECはある程度の規模になればこうした貿易取引で行いますが、国際郵便EMSやクーリエ便の場合はかなり簡素化された手続きになります(今回は説明割愛します)。
あなたはこのうちどの仕事をしていますか? (輸出の場合)
出典:合同会社トロ資料
モノ、カネ、カミの3つの流れと関係者
外国との取引は、物流(モノ)、お金の回収(カネ)、貿易ならではの書類作成(カミ)、の流れを理解し、書類をきちんと作ることの徹底です。どのような関係者・当事者がいるか、それぞれどのような役割・仕事をしているかを見てみましょう。
貿易当事者は何をするか?
改めて各関係者・当事者の紹介をしましょう。
- 売主(seller):貨物を外国に販売する。輸出申告者、輸出者(exporter)、荷主、荷送人(shipper)である。
- 買主(buyer):貨物を外国から購入する。輸入申告者、輸入者(importer)である。通常、荷受人(consignee)である。
- 海貨業者・通関業者・乙仲:荷主からの委託で輸送業者の船や航空機への船積みや荷卸しを行う(freight forwarder, shipping agent)。荷主の委託をうけて通関書類の作成・通関手続きの代行を行う(customs broker)。
NVOCC(Non vessel operating common carrier)は、自らは船舶を保有しないが、荷主に対して運送を引受け、船会社や航空会社など貨物の実運送事業者を利用して、海陸、海空の国際複合運送を行う。
- 運送(航)事業者(Carrier):運送人。貨物を輸送する業者。鉄道、トラック、航空、船会社のことを言う。
- 銀行(bank):売主と買主の間の代金決済の仲介業務を行う。送金支払い、手形取立て、債権債務の決済等の外国為替取引業務を行う。
- 保険(insurance):貨物の輸送中の事故による損害等のリスクに備える貨物保険(外航貨物海上保険)のことを言う。航空輸送の場合にも利用する。他の保険として、製造物責任に備えるPL保険、代金回収など取引そのもののリスクに備える貿易保険、がある。
- 税関・役所:税関(Customs office)は、関税の賦課や徴収、輸出入貨物の取締り、税関統計の作成、内国消費税(VAT)の賦課・徴収や免税、等の業務を行う。他の役所には、食品の検疫機関、貨物の安全性や規格を検査する検査機関、等がある。
役所ではないが、原産地証明書は公的機関である商工会議所から発行される。
- 法律専門家:法律事務所や弁護士(lawyer)。法令に関する相談、契約書作成、紛争時の解決代行、等の業務を行う。
*参考文献:ジェトロ貿易ハンドブック、貿易用語辞典(石田、中村著)
貿易当事者の役割
貿易関係者・当事者が行う業務は多岐に渡ります。売主と買主だけでビジネスが回ることはありません。他の企業、団体、役所とよく連絡を取りながら進めて行きます。どのような業務をどの関係者・当事者が行うかをマトリックス表に記載しました。ビジネスの形態によりこの表と違うこともありますが、参考にして下さい。
黄色い枠は特にこの関係者・当事者が主体になって業務を行う、あるいは指示を行う、ということを意味します。売主と買主は当該取引の全体像を理解することが大切です。
出典:合同会社トロ資料
まとめ
貿易や海外関係の仕事をするには、どういう関係者・当事者と一緒に進めて行くかが大切です。関係者・当事者の名称や役割を理解してスムーズに仕事を開始しましょう。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングや研修サービスを、民間企業およびジェトロや中小機構などの公的支援機関向けに提供している。これら機関向けセミナー実績も多数有する。
URL: https://sub.toro-llc.co.jp/