海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
前回は20問のクイズのうち、最初の10問について答え合わせと解説をしました。
今回は後半の10問について、答え合わせと解説をします。
Q11 燃料代の急激な変動に対応する調整運賃をCAFという。
A11 「違います」。
CAFとはCurrency Adjustment Factorの略です。貿易における輸送費に対し為替レートの変動による為替差損(益)を調整するための割増金のことです。
燃料代の調整金のことはBunker Adjustment Factor、略してBAFと言います。燃料油価格 (基準値) と実際の購入価格との差を調整するための追加料金のことです。
Q12 混載貨物はCFS(コンテナフレートステーション)に搬入する。
A12 「その通りです」。
混載貨物は小口貨物(LCL=Less than Container Load)なので1本のコンテナではスカスカになるケースです。そこで他の荷主の小口貨物と一緒に1本のコンテナに積込みます。小口貨物を集荷して1本のコンテナに積込むための場所をCFS(Container Freight Station)と言います。CFS扱いの貨物にはCFSチャージが運賃に加算されます。
Q13 船荷証券B/Lにおいて通常、Shipperは荷送人(輸出者)、Consigneeは荷受人(輸入者)、Notify Partyは貨物の到着案内先、である。
A13 「そうである場合、そうでない場合があります」。
L/C決済の場合、B/L上のConsigneeにはTo orderやTo order of shipperなどの記載がされます。B/Lは有価証券ですから、L/C決済では裏書することで権利の譲渡が可能です。Consignee欄にそう表記される場合、そのB/Lを指図式(Order B/L)と言います。一方、Consignee欄に輸入者名が記載される場合のB/Lのことを記名式(Straight B/L)と言い、裏書による譲渡ができません。
航空貨物ではAWB(Air Waybill)が発行されます。AWBに指図式はなく全て記名式です。
Q14 航空貨物の容積計算は、梱包貨物の3辺を㎝表示して縦横高さを掛け5,000で割った値を容積重量kgとする。縦40㎝、横50㎝、高さ30㎝の容積重量は12㎏である。
A14 「合っている場合、違っている場合、の可能性があります」
貨物輸送では通常、実重量と容積重量のうち重い方の重量をもとに料金計算されます。海上貨物の場合は1立方メートル(1M3)が1トンです。水の容積=重量と同じです。日本の陸上トラックは1立方メートルを280㎏で計算します。
航空貨物の場合はIATA(航空運送協会)が6,000cm3=1㎏と定めていますが、企業によっては5,000cm3=1㎏と定めていることがあります。
従い、設問は40×50×30=60,000なので、6,000cm3=1㎏を採用するならば容積重量10㎏となり、5,000cm3=1㎏を採用するならば容積重量12㎏となります。輸送業者によって5,000あるいは6,000ということなので、事前によく確認してからサービスを利用しましょう。
Q15 信用状L/C条件と実際に作成した書類の記載内容が一致しないことをディスクレ(discrepancy)と言うが、カンマやハイフンの誤記は軽微な不一致と見なされ、特に問題はない。
A15 「書類記載事項の不一致をディスクレと言いますが、問題がないというのは誤りです」。
InvoiceやPacking Listなど船積書類の記載事項は、L/Cで指示された通りに作成します。カンマやハイフンの誤記は軽微な不一致ですが、発行銀行にとっては支払い拒否の理由になります。対策としては、輸出者がL/G(Letter of Guarantee 念書)を買取り銀行に差し入れて買取り依頼する方法があります。誤記が重篤な場合は、ケーブルネゴという方法で事前に発行銀行に対してディスクレ内容を電文で示して承諾を得たうえで、買取り銀行に書類の買取りを依頼する方法があります。
いずれにしてもL/C決済の場合は船積書類作成に誤記がないよう細心の注意を払い、ダブルチェックをすることが求められます。
Q16 輸出者は船積み確認後、船名、出航日、船積み港、品名、数量、金額、等を輸入者に連絡する。これをshipping adviceという。
A16 「その通りです」。
Shipping Adviceは輸出者の義務です。FOB/FCA/CFR/CPTなど輸入者が貨物保険をかける条件では、Shipping Adviceの情報が必要です。CIF/CIPの場合も確定した船積みスケジュールが必要なので必ず連絡を行います。
Q17 輸入申告価格はCIFなので、FOB/FCA条件の場合は運賃証明書や保険料明細書を税関に提出する。
A17 「その通りです」。
輸入申告はCIFで行います(カナダ、米国、オーストラリア、ニュージーランドなどアングロサクソン系の一部の国はFOBで輸入申告します)。輸入者は設問の書類を提出して、CIF価格申告することが求められます。
Q18 輸出者は輸出通関に必要な書類として、Invoice、Packing List、Shipping Instructionを税関に提出する。
A18 「違います」。
Shipping Instruction(S/I)は船会社などの運送者に対して貨物や運送内容の具体的指示をするための書類です。輸出通関時に税関に提出する書類ではありません。運送者はS/Iに基づいて船荷証券(B/L)を作成します。
Q19 輸入時、通関業者は輸入申告を行い、輸入許可を得てから、関税を支払う。
A19 「違います」。
関税を支払わないと輸入許可がおりません。輸入関税を支払うのは「輸入者」ですから、もし通関業者が輸入関税を立て替えるような場合、輸入者は即座にその関税を支払う必要があります。
Q20 輸出時の安全保障貿易管理業務において、商社はメーカーから提出されたリスト規制品の該非判定情報を信じて、そのまま輸出申告に使用してよい。
A20 「違います」。
安全保障貿易管理は「輸出者」が内容に責任を負います。したがい、「輸出者」である商社はメーカーから提出された書類をそのまま信じるのでなく、書類上に記載してある根拠法令の番号や年度などをまずチェックすることは必須です。そのうえで経済産業省の安全保障貿易管理のページにあるマトリクス表で仕様や数値もチェックしましょう。
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/
Q11からQ20までの各クイズは下の図で黄色い箇所の業務に対応します。日々の業務で理解が怪しいところがないか、この機会に再確認しましょう。
さて、皆さんの答えはどうでしたか?
次回はこの一年間を振り返ってみましょう。
まとめ
調査、契約・受注、輸送、書類、通関、決済、という貿易実務の理解に問題ありませんか?みんなの海外取引ブログの過去記事にもお役立ち情報が満載です。この機会に理解度を確認してみましょう。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングサービスを、民間企業およびジェトロや中小機構などの公的支援機関向けに提供している。これら機関向けセミナー実績も多数有する。
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