海外マーケティング支援を行っている合同会社トロの芳賀 淳です。
当社はA国のメーカーB社から直接輸入をしています。コンテナを開けたら商品が水濡れしていました。商品に色ムラのような汚れがありました。1か月後に日本着予定の商品が2週間遅れる船積みとなることが判明し、季節物のセールスに間に合いそうにありません。こんな場合にはB社に対してどのような行動を取るべきでしょうか? 外航貨物海上保険(以下 保険)で求償すればよいでしょうか?
こんなトラブル時はどうすればよい?
出典:合同会社トロ資料
1.水濡れの原因究明と代品の送付を要請する
コンテナを開けたら商品が水濡れし、梱包はおろか中の商品も水濡れしていました。こんな場合に自社として次のような行動をとりましょう。
- 事実(原因)調査の要請
- 代品手配の要請
- 保険、補償、違約金の要請
取引相手もおそらく意図して水濡れを起こしたわけではありません。事実関係に基づき迅速な対応をしてもらうよう交渉します。
日本国内の納入先に対しても状況を説明し、水漏れ被害の無かった商品を納品することから行動を取りましょう。
尚、保険で求償できる水濡れは、海・湖・河川の水(保険の基本条件はICC-AかB)、雨や雪(保険の基本条件はICC-A)が対象です。それ以外の水濡れは、梱包に起因するものもあるので、調査結果によっては保険で補償されない可能性があります。
2.サンプル通りの商品納品要請をする
色ムラ商品は売り物になりません。自社の検品に基づき、なぜ仕様書やサンプルと違う商品が納品されたのか、先方に問合せます。具体的には次の確認をします。
- サンプルとの齟齬理由解明
- 品質基準確認
- 生産現場確認
- 仕様書、品質規格基準書
- 検品合格書確認
日本国内の納入先に対しても前記1同様に状況を説明し、納入する商品の数量や納期について打合せをします。
保険は、貨物固有の瑕疵または性質による損害は補償対象外なので、輸出者との契約をきちんと作成しておくこと、及び上記事項の確認が重要です。
3.船積み遅延
季節物商品において2週間の船積み遅延は大きな問題です。先方にはなぜ遅れるのかの原因を説明願うと共に、最優先で納期短縮努力をしてもらいます。あわせ、輸送方法の変更要請も考えます。保険では遅延による損害は補償されないので、輸出者との契約内容、及び交渉が非常に重要です。
- 原因解明
- 輸送ルートの変更
- LCLからFCL、航空便の利用
季節物商品はセールス時期を逸すると不良在庫になる恐れがあります。日本国内の納入先には前記同様に状況を説明し、可能な限り当初納期に近い納入努力をしている旨を説明します。
4.輸出元との交渉が難航することを避ける
前記1から3のトラブルケースでは、保険求償できないものもあるので、輸出元に誠意をもった対応をしてもらうことが問題解決の重要なポイントです。
まれに誠意の無い発言や行動が見られる取引先もいます。そういう相手とは交渉もなかなかうまく進みません。
トラブルが発生してから相手に誠意が無いと不満を表すのではなく、取引を開始する前に相手がきちんとしたビジネスを積み重ねてきた会社かどうかを調べることは不可欠です。輸出時の代金支払いリスクを確認する信用調査だけでなく、輸入時にも相手のビジネストラブル(訴訟歴の確認)などを信用調査できちんと調べておくことをお勧めします。
まとめ
海外からの輸入で、水濡れ、商品とサンプルの違い、納期遅延、などのトラブルが発生することがあります。輸出元との交渉でらちが明かないことがまれにあります。取引開始する前に相手が過去に複数のビジネストラブルを抱えていないか等、信用調査をきちんとすることが重要です。
【プロフィール】
合同会社トロ 代表社員 芳賀 淳(はが あつし)
大手総合電機、精密機械メーカーにてベトナム他での海外販路開拓や現地法人設立などの海外業務に携わった後、合同会社トロを設立。豊富な海外業務・貿易実務経験を活かしたコンサルティングや研修サービスを、民間企業およびジェトロや中小機構などの公的支援機関向けに提供している。これら機関向けセミナー実績も多数有する。
URL: https://sub.toro-llc.co.jp/