経済拡大のポテンシャルを秘めた海外新興国市場は、投資先として非常に魅力的です。しかしその反面、先進国と比べて政治的、社会的、経済的に未熟な面も存在するため、ビジネスを行う上で多少の危険性は拭いきれません。
海外投資や事業を行う際、個別のビジネスパートナーが抱えているリスクとは別に、各国の政治情勢や社会環境の変化によって生まれるリスクを「カントリーリスク」と言います。
今回は、そのようなカントリーリスクの中でも代表的とされるものを5つ、ご紹介します。
▼目次
代表的なカントリーリスク
【1】経済リスク
カントリーリスクの内、国債の債務不履行など、国家規模の経済的問題が発生する可能性を、経済リスクと言います。
自国通貨への国際的信用度が低い新興国の中には、大きな経済的リスクをはらんでいる国も少なくありません。顕著な例としては、ジンバブエにおける大規模なインフレーションなどが挙げられるでしょう。このような経済的リスクを測る指標としては、経済成長率(GDP成長率)、消費者物価指数、国際収支などがあります。
【2】政治リスク
政治的基盤が安定していないために生まれるビジネス上のリスクを、政治リスクと言います。
過激派組織による予測不能な無差別テロ問題などに対する各企業の懸念は、この政治的リスクとしてあてはまるでしょう。軍部によるクーデターが頻繁に起こるタイや、長期にわたる独裁政権が倒れた後に混乱が続く北アフリカも、投資先としては高い政治的リスクをはらんでいると考えられます。また、今は顕在化していなくとも、近い将来トラブルの火種となりそうなリスクを抱えている国も存在します。
【3】法務リスク
各国の遵法意識、もしくは司法制度そのものに関する懸念を、法務リスクと言います。
例えば知的財産権の問題などについて、諸外国に対する不公平な判決が前例として存在している国は、総じて法務リスクが高いと言えます。
【4】社会リスク
その国固有の文化・宗教・歴史的な事情により、ビジネスにマイナス影響を及ぼす可能性を、社会リスクと言います。
反日感情が激化した中国において、現地に進出している日系の小売店が打ち壊され、略奪に遭った事件は記憶に新しいところです。また、ある国では、製品について国教上禁忌とされる原料を使っているという噂が流れたために、不買運動が起きたこともあります。
【5】自然災害リスク
不可避の自然災害も、カントリーリスクの一つとして数えられます。
地震・津波の危険性が常々示唆されてきた日本において、現実に起こってしまった原発事故が顕著な例です。数年前のタイの大洪水による日系企業への大ダメージや、マレーシアにおける首都クアラルンプール周辺の水不足による給水制限の影響など、水文学的要因も多く見受けられます。
補足
特定の国が抱えるリスクを「チャイナリスク」「ロシアリスク」などと称することもあります。
各国におけるカントリーリスクの度合いについては、調査会社や格付け機関ごとに独自のリストや指標を作成しているため、海外拠点設置のターゲットとなる国がある場合は、参考にすると良いでしょう。
おわりに
代表的なカントリーリスクを5つご紹介しました。
長引く景気低迷と少子高齢化による人口減で日本の国内市場がシュリンクする中、海外進出に活路を見出そうとする企業は少なくありません。しかし上記の通り、特に新興国の中には、大きなカントリーリスクをはらむ国も多数存在します。
文化や人種、宗教、商習慣などが大きく異なる外国の企業と関わる際は、さまざまなリスクを予想し、対策を講じることが大切です。海外ビジネスにおける損害を回避するためにも、諸外国のカントリーリスクについて把握しておきましょう。